穀物のメリット
猫に穀物を与えるメリットは、主にエネルギー源としてです。
穀物のおよそ70%以上はでんぷん(糖質)であり、エネルギー源となり、それ以外には微量ながらタンパク質、脂質、ビタミン・ミネラル、繊維質を含みます。これらは玄米やオートミールのような穀物からは豊富に得られます。
特に繊維質は猫にとって毛玉の排泄、腸の健康維持のほか、満腹感や血糖値のサポートなどダイエットにも役立つ働きが期待できます。
スタッフコラム80話目
愛猫(パートナー)の健康維持のためにはフード選びがとても重要だと考える飼い主(オーナー様)が増え、フード選びの話題はつきません。
特に近年は「肉食動物、グレインフリー(穀物不使用)」というキーワードが目立ちます。
同時に「本当に猫にはグレインフリーがいいの?」、「それが猫の体質や食性に合っているの?」という疑問もあります。ねこまんまという表現があるように、猫は昔からごはん(白米)を食べているイメージがあるため、穀物を使わないという点に少し違和感を覚えやすいのではないでしょうか。
そこで今回は、猫にとってグレインフリーフードのメリットやデメリット、体質別のフードの選び方についてペットフーディストの山本が説明します。
まず、猫は肉食動物であり、体の機能もそれに合ったものが備わっています。ヒトと一緒に生活するようになってから雑食化が進んだ犬は雑食に適した体に変化してきましたが、猫は肉食に適した体のままです。
それは歯の形状や内臓の働き、栄養の代謝(消化や吸収、体内での変化)からもわかります。
たとえば、植物由来のビタミンAを犬は利用できますが、猫は利用できません。肉に含まれるビタミンA(レチノール)でないと働かないのです。
ほかにもタウリンやアラキドン酸のように肉から補給しないといけない栄養素があります。もそのため、体重当たりに必要な肉の量(動物性タンパク質の要求量)は犬よりも多くなります。
近年グレインフリーフードが注目されているのは、猫の肉食性に注目して穀物を使わず、肉類に含有量を比較的多めにしている点です。
肉食といっても猫は肉のみでは生きていけません。私たちと同じように7大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、水、食物繊維)が必要です。
たとえばスーパーで購入できる肉(正肉や内臓のレバーや心臓など)だけでは補給しきれません。野生の猫は、ネズミ、小鳥、昆虫などを捕食しますが、この中には肉類にはない栄養素も含まれています。その結果、小動物全体を食べることで、その胃腸内に含まれるグレイン(穀物)も摂取していたのです。
猫は肉食動物であるため穀物の消化が苦手と言われる理由は唾液中にデンプンを分解する酵素(アミラーゼ)が分泌されないことがあげられますが、小腸内では消化が可能です。私たちと同じように炊いた米の状態なら問題ありません。穀物のでんぷんは生では消化できませんが、水を加えて加熱(炊飯)することにより、消化できるでんぷんに変化します。キャットフードに含まれる穀物は猫にも消化できる(図1で示すαでんぷん)状態なので穀物入りフードも与えられるのです。
猫に穀物を与えるメリットは、主にエネルギー源としてです。
穀物のおよそ70%以上はでんぷん(糖質)であり、エネルギー源となり、それ以外には微量ながらタンパク質、脂質、ビタミン・ミネラル、繊維質を含みます。これらは玄米やオートミールのような穀物からは豊富に得られます。
特に繊維質は猫にとって毛玉の排泄、腸の健康維持のほか、満腹感や血糖値のサポートなどダイエットにも役立つ働きが期待できます。
穀物が多すぎるとやはり消化器系に負担をかけてしまいます。また、穀物アレルギーを持つ猫にとっては、穀物が含まれるフードは避けるべきです。フードによってそれぞれ穀物の種類や含有量は異なりますので、どのフードを与える際にも言えることですが愛猫に合っているかどうか、与えた後のうんちなど愛猫の様子を観察してください。
このフードの特徴は、穀物不使用のほかに比較的高タンパク質、高カロリーなことです。
穀物アレルギーや肥満傾向の猫、活発な猫に適しています。高タンパク質が筋肉維持をサポートすることでエネルギー消費をサポートしたり、太りやすいでんぷん量が少ないことも体重維持に役立ちため健康的な体重管理を目指す場合におすすめです。
また、小食な猫には高カロリーで少量ずつ食べられるフードの方が合っている場合があります。
【参考】
ダイエットが必要なとき
やはり体質によっては適さない場合もあります。せっかく筋肉維持に役立つといっても、運動量が少ない場合は、使われなかったタンパク質が脂肪に変わり太る原因になります。またタンパク質の量によっては肝臓での代謝にも負担がかかる場合があります。
また、穀物のかわりにでんぷんが豊富なじゃがいものような芋類を多く使用したフードの場合は、必ずしも太りにくいフードとはいえません。
もちろんコスト面でも肉の割合が多くなればそれだけ価格も高くなる傾向があります。
穀物使用・不使用に関わらずフード選びの際に大事なのは、まずは愛猫の体質を理解することです。基本的なところでは、現在の体型やうんちの状態、アレルギーの有無です。
疾患等が無く、獣医師より特にフードの指導がない場合のフード選びには、次にご紹介するフードの種類を参考になさってください。
体重を減らしたい場合、単純にフードの量を減らせばいいわけではありません。必要な栄養素まで不足すると健康を害してしまいますし、空腹のストレスで異食を招く場合もあります。ダイエットが必要な場合は、ダイエットに適した栄養バランスに配慮したフードを選ぶことが大事です。
N&D キヌア ウェイトマネジメント(体重管理)ラム(ブロッコリー入り)成猫用
たっぷりのタンパク質ですが低脂肪、低カロリー、また満腹感サポートのために繊維質はたっぷり含むグレインフリーフード。主原料のラム肉は、おいしさと代謝維持の両面からダイエット向きの素材です。
商品を見るFORZA10 ウェイトコントロールアクティブ キャット 低カロリー
ダイエットにふさわしい低カロリーレシピです。比較的小さい袋(454g)なので小型タイプの愛猫、または少量から試してみたい場合におすすめです。穀物は白米を使用しています。
商品を見るNatural Balance ファットキャッツ ドライキャットフォーミュラ
比較的たっぷりの袋(2.27kg)なので大型タイプの猫におすすめです。給与量通りに与えるとタンパク質は豊富に、脂肪は控えめになります。穀物はオートミールを使用しています。
商品を見る※与える量を減らしたい場合は、推奨量より3割以上減らすことは避けてください。(ただしトッピングなどで栄養やカロリーを調整する場合はこの限りではありません)
筋肉維持のためにはなんといっても動物性タンパク質をしっかり摂ることが大事です。栄養面でサポートしつつお家の中ではキャットタワーなどを利用した上下運動を行うなど、運動で筋肉を刺激することも大事です。猫の関節痛は意外と多いです。将来の心配を少しでも減らすために若いうちから筋肉維持を意識することが役立ちます。
※ダイエットさせたい場合は、まずは先程のダイエットでご紹介フードがおすすめです。
フードの切り替え時の注意点
はじめて与えるフードへの切り替えは、慎重に行うことが重要です。現在のフードに少しずつ混ぜていき、その反応を観察します。全量が新しいフードになるまでに約1週間から10日間かけて行ってください。これにより、万が一、体質に合わなかった場合の不調を最小限に抑えることができます。
猫用グレインフリーフードで人気の高いフードはどれですか?
フィーライン ナチュラル フリーズドライ チキン&ラム・フィーストです。
次のページではグレインフリーフードに限らず人気商品を掲載していますので参考になさってください。
猫用ドライフード、おやつ、トッピングのランキング
高齢猫にもグレインフリーフードを与えられますか?
愛猫の健康状態によっては適切なグレインフリーフードを選べるでしょう。多くの高齢猫では腎臓はもちろん内臓への配慮が必要となります。特に慢性腎臓病の場合にはタンパク質を制限した食事が必要となり、それに対応したグレインフリーフードもあります。ただし、膵臓・肝臓への配慮には低脂肪が優先されるため、比較的脂肪が多めに含まれるグレインフリーフードは避ける必要があります。
※疾患がある場合は必ず獣医師に相談の上、適切なフードを選んでください。
愛猫にとってグレインフリーフードが一番合っているかどうかは、体質や好みにもよります。
穀物の使用・不使用に限らず、キャットフードはそれぞれ栄養バランスに特徴があります。
肉食動物だからといって肉たっぷりの食事が合っているとは限らないのです。
情報が多くてフード選びに迷うのは当然です。だからといって人気が高いというだけで選ぶのではなく、そのフードが愛猫の体質に合っているかどうかは常に観察することをおすすめします。
理想は数種類のフードをローテーションすることです。そのときどきのうんちの状態や体調を観察し、愛猫にも風味の変化に慣れてもらっておくと万が一病気になったときにも臨機応変に対応しやすいです。
喜んで食べているかどうかも、もちろん大事なことですね。みなさんの愛猫はどんなフードがお好みですか?
フード選びにお困りのときは、ぜひお気軽にご相談ください。
ご相談は無料
ごはんの窓口はこちらから筆者
ペットフーディスト、 アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー、 ペット栄養管理士、 犬の食事療法インストラクター上級師範
GREEN DOG & CAT ライフナビ編集部
犬と猫の基礎栄養学を学んだペットフーディスト等の資格を持つメンバーで構成されています。
パートナー(愛犬・愛猫)との暮らしを通して学んだことや感じたことを大切に、オーナー(飼い主)の目線に立ったコンテンツ制作を心がけています。
<編集部メンバーの取得資格> 編集部メンバーは、それぞれ得意分野に合わせて以下の資格を取得しています。
・ペットフーディスト
・ホリスティックケア・カウンセラー・ペット栄養管理士
・犬の食事療法インストラクター上級師範
・愛玩動物飼養管理士 など