- GREEN DOG & CAT
- ペットフード・ペット用品通販
- 犬との生活・特集一覧
- 犬の特集
- 病気
- 「歳だから」とあきらめないで。シニア犬の聴力低下と認知症の関係とは?
「歳だから」とあきらめないで。シニア犬の聴力低下と認知症の関係とは?
- フードの与え方
- 専門家監修
犬が年を重ねてきた時には人間と同じように身体のさまざまな機能も低下してきます。一般に「耳が遠くなる」と言われる聴力の低下もそのひとつです。
耳の場合、歩行や視力など他の身体の機能と違ってついつい「もう歳だから仕方ないね」と考えがちですが、聴力の低下は別の大きな症状と関連している場合があります。愛犬(パートナー)の聴力の低下が感じられたら病院での検査や治療をしっかり検討した方が良い理由をご紹介します。
犬の聴力の低下と認知症の関連
玄関のチャイムが鳴ると必ず吠えていた愛犬が反応しなくなった、名前を呼んだ時の反応が薄く耳を動かさなくなった。シニアと呼ばれる年代に差し掛かると犬にもこのような行動の変化が現れ、多くの飼い主さんが切なさと共に「歳をとると仕方がないね」と受け入れていらっしゃると思います。
しかし2022年にアメリカのノースカロライナ州立大学が行なった調査によると、犬の聴力の低下は認知機能の低下と強く関連していることが明らかになっています。認知機能の低下とは人間でいうところの認知症で、犬の場合は正式にはCanine
Cognitive Disorder (CCD)=イヌ高齢性認知機能不全と言います。
この調査では39頭のシニア期の家庭犬に、音を聴かせて脳波の反応を測定する方法で聴覚の検査を行いました。飼い主には犬の認知機能の程度を評価するための質問票に回答してもらい、それぞれの犬の認知症について正常、軽度、中度、重度の判定が行われました。犬たちはまた別の日に認知機能を測定する行動テストも受けました。
聴力検査、質問票、行動テストの関連は明らかでした。聴力検査の結果が低い(音が聞こえない)犬は、質問票で中度〜重度の認知症という評価に当てはまる割合が高く、行動テストの成績も低くなっていました。このように犬の聴力の低下と認知機能の低下には強い関連があることが示されました。
なぜ聞こえにくくなると認知症につながるのか?
実は人間の場合、聴力の低下と認知機能の低下が大きく関連していることは既にわかっています。加齢性の難聴のある人はそうでない人に比べて認知機能の低下が30〜40%速く、難聴は高血圧や肥満よりも認知症のリスクに関連していると言われています。
加齢性難聴だけでなく、若年〜中年期の難聴も老年期以降の認知症リスクに関連しているという調査報告もあります。
なぜ聴覚の低下が認知症に関連するのでしょうか。それは耳から聞こえた音を処理する脳の領域と記憶や思考などの認知処理の領域が同じであるためと考えられているからです。耳が聞こえにくくなって脳に入ってくる音が減少すると皮質細胞への刺激が少なくなります。刺激が少なく十分に活用されなくなった脳の領域は縮小し、働きが低下していく可能性があります。
人間の脳と犬の脳はほぼ同じ構造で、よく似た方法で情報を処理しています。犬の場合も耳が聞こえにくくなって脳の皮質細胞への刺激が少なくなることが認知機能を速く低下させる可能性は高いと考えられます。
耳の治療や検診が大切な理由
愛犬の耳が遠くなったような気がすると感じた時、早めに動物病院での診察を受けることが重要です。犬の聴力の低下の原因は加齢以外にもたくさんあり、治療で聴力が改善することも少なくないからです。
これらは聴力低下につながる原因の一部です。
・外耳炎、中耳炎、内耳炎などの炎症性疾患
・過剰な耳垢
・異物混入や外傷
・耳の中の腫瘍
・アレルギーや感染症による鼓膜へのダメージ
・甲状腺機能低下症
・脳や神経の疾患
耳が聞こえにくい様子を単純に歳のせいで片付けてしまうと、簡単に治療できる疾患を悪化させたり、重篤な病気を見逃してしまうことにもなりかねません。定期的な検診が大切な理由です。
普段からできる聴力低下の予防は、全身の健康と外耳道を清潔に保つことです。耳の掃除の仕方は犬種によっても違いますので動物病院で正しい方法を教わりましょう。
加齢によって耳が遠くなったことがわかった場合には、他の器官からの脳への刺激を継続することが大切です。身体に無理のない範囲での散歩は視覚や嗅覚、触覚を使う最良の方法です。他にはノーズワークやフードパズルなども取り入れてみてください。
まとめ
犬の耳が聞こえにくくなることと認知症の進行に関連があるという研究結果から、病院での検査や診察が重要であるという話題でした。
私の犬たちは晩年から最後まで耳が遠くなったという様子はなかったのですが、友人の愛犬が「すっかり聞こえなくなってしまって」という話を聞くと、歳をとると物音にいちいち反応しないで穏やかに過ごせるという面もあるなあと呑気に考えていました。
確かにそのような一面もあるかとは思いますが、それは他の疾患などの可能性を検査し終わって老化による難聴だとわかってからの話だなと今は考えています。
【参考記事】
Relationship between hearing, cognitive function, and quality of life in aging companion dogs
https://doi.org/10.1111/jvim.16510
※この記事はガニング亜紀さんが執筆された記事をGREEN DOG & CAT ライフナビ編集部が編集しお届けしています。