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【獣医師解説】犬の白内障の症状や自宅ケアと予防法
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白内障は、目の中にある水晶体というレンズの一部、もしくは全てが白く濁ってしまう病気。今回は、犬の白内障の原因と症状、治療法や家庭でできるケアの方法をお伝えします。
白内障ってなに?
白内障とは、目の中にある水晶体というレンズが白く濁り、視力低下をきたす病気です。水晶体は目の中に入ってきた光を屈折させ、網膜に光を届ける働きをしています。
そのため、本来であれば水晶体は透明でなくてはなりませんが、白内障によって、水晶体が濁ることにより視界がぼやけ、進行すると失明に至ることもあります。
白内障の原因とは
水晶体のタンパク質が変化し、濁りが出ることによって白内障は起こります。原因は大きく分けて次の2つです。
1.原発性白内障
遺伝的素因によるもの
2.後天性白内障
加齢性の変化、糖尿病などの代謝性の変化、外傷や中毒、網膜症などによるもの
白内障は、加齢に伴ってゆっくり進行するものもありますが、実は犬では若い年齢(6歳以下)で発症する遺伝的素因によるもののほうが、発生率が高いのです。この点が人間と犬の白内障との大きな違いです。
白内障発生の遺伝的素因は約60犬種で確認されています。特に日本では、次の犬種に多く見られます。
遺伝による白内障が多い犬種
・アメリカン・コッカー・スパニエル
・柴犬
・プードル
・キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
・マルチーズ
・シーズー
・ビーグルなど
発症の詳しいメカニズムについては不明な点が多く、解明には至っていません。ただ、その原因の1つとしては、酸化ストレスがあるのではないか、とされています。
白内障の症状は?
犬は目を使って複雑な作業をしたり、物を細かく観察したりすることはありませんので、少し見えにくい程度であれば、生活に支障をきたすことはありません。
けれど、白内障が進行すれば、視野のすべてが曇り、ものの輪郭が分からなくなってきます。
柱や壁などによくぶつかるようになったり、ちょっとした物音にも驚くようになったりします。だんだんとオーナー様とのアイコンタクトも取りにくくなり、場合によっては、明暗すらわからなくなってしまうことがあります。
完全に失明することもある病気ではありますが、全ての犬がそうなるわけではありません。犬は聴覚や嗅覚が発達している動物なので、特に慣れ親しんだ場所では不便さや行動の異常を表しにくいため、症状が出ていても、オーナー様が愛犬の視力の低下に気づかないことも多いようです。
しかし、白内障が進行すると、ブドウ膜炎や水晶体脱臼、緑内障など、激しい痛みを伴う眼疾患を続発することもあります。
愛犬の異変に気づいたら、放置することはせず、まずは動物病院でしっかり診察してもらうことが大切です。
白内障は治療できるの?
白内障になってしまうと、お薬で治すことはできません。白内障は水晶体のタンパク質が変性したために起こるもので、生卵がゆで卵になってしまったイメージです。ゆで卵にどんなに薬をかけても生卵に戻らないと同じように、真っ白になってしまった水晶体は、残念ながら元には戻りません。
白内障の治療は、内科的な方法もしくは外科手術になります。点眼や内服薬などの内科的な方法は、白内障の初期には進行を少しでも遅らせるために行われますが、視力を障害している白内障を元に戻すわけではありません。
根本的な治療には外科手術が必要となります。白内障の施術方法にはいくつかありますが、一般的には水晶体の内容物を細かく砕いて吸引した後に、眼内レンズを挿入する方法がとられます。
人では、白内障の手術は一般的に行われていて、短時間で安全にできるものになっています。しかし、犬の水晶体は人のものに比べて厚く丈夫なことから、除去するのには時間がかかり、眼球への負担も大きいため、かなりの高度な専門技術と医療機器が必要になり、また、オーナー様による術後の丁寧なケアも不可欠です。
費用は、病院によって異なりますが一般的には1眼あたり約20~30万円ほど、場合によってはもっと高額になる場合もあるようです。
食事やサプリメントによる白内障のケア方法
白内障の発生メカニズムは、はっきりと解明されていません。そのため、内服薬や食事、サプリメントによって白内障を改善することは、残念ながらできません。
ただ、白内障の原因の1つとして酸化ストレスが挙げられていることから、酸化ストレスのケアが愛犬の日常のケアや、白内障の予防にもつながります。
酸化ストレスは、健康な細胞を酸化させ、細胞のガン化や免疫細胞へのダメージ、組織の老化など、白内障の原因とされる以外にも愛犬にさまざまなダメージを引き起こします。
酸化ストレスから愛犬を守る!
日々の酸化ストレスから愛犬を守るためには、抗酸化栄養素を豊富に含んでいる食材やサプリメントを積極的に摂取させることを心がけてはいかがでしょうか。
代表的な抗酸化栄養素
ビタミン
ビタミンの中でも、ビタミンCとビタミンEが抗酸化作用を持ちます。ビタミンCとビタミンEは協力的な関係にあるので、一緒に取ることによって抗酸化力アップが期待できます。ビタミンCはじゃがいも、さつまいも、かんきつ類、茶葉など、ビタミンEはナッツ、かぼちゃ、うなぎに多く含まれています。
ミネラル
セレン、銅、マンガン、亜鉛は抗酸化ミネラルとして位置づけられています。補酵素など間接的なかたちで、力を発揮します。牡蠣やレバー、卵黄、ナッツ、カツオ節などに多く含まれています。
フィトケミカル
野菜や果物などに含まれている物質の総称のことで、紫外線や害虫などから自らを守るために作りだしている「色」「香り」「苦み」といった成分です。トマトに含まれるリコピンやかぼちゃなどに含まれるβ-カロテン、ビルベリーのアントシアニン、緑茶のカテキンなどさまざまなものがあります。
コエンザイムQ10
コエンザイムQ10は、人間の全ての細胞1つ1つに存在する補酵素であり、強い抗酸化作用を持ちます。しかしながら、年齢と共に体内での生成が少なくなってきます。動物性食品に含まれますが、1日の必要量を食事で摂るのは至難の業。サプリメントで摂取したほうが簡単です。
アスタキサンチン
オキアミや鮭、鯛などに含まれる赤い色素です。アスタキサンチンはヘマトコッカスと呼ばれる海の藻類が作り出した植物由来のカロテノイドですが、食物連鎖によってさまざまな生物の体に取り込まれています。
犬に与えやすい抗酸化サプリメントと補助食
わたしのチカラ アニマル ウィリブ(還元型コエンザイムQ10)
その他厳選犬にとって風味のよいパウダータイプで給与量もごく少量のため与えやすいサプリメント。
涙やけクリル
Natural HarvestコエンザイムQ10とアスタキサンチンが一緒に摂れるカプセル状オイル。目の下の毛の変色が気になる愛犬にもおすすめです。
ビルベリー・カレンデュラ
Animal Essentialsハーブから目の健康に役立つルテイン、アスタキサンチンの補給ができる液体チンキ。甘みがあるので比較的与えやすいです。
プレミアム 牡蠣100%スープ
その他厳選亜鉛たっぷりの牡蠣のスープ。栄養を目に送り届けるためにも水分補給できるスープが◎
愛犬の目が見えづらいと気づいたら
犬は仮に視力を完全に失ったとしても、優れた臭覚や聴覚で日常生活に順応することができます。慣れている家具の配置を変えたりはせず、障害物をどけたり、危ない家具の角をクッションでガードしてあげたりするなどで、室内環境を整えましょう。
また、突然大きな音を出すと驚くことがあるので、穏やかにゆったりと過ごせるよう、音にも配慮することも大切。寂しがらないように話しかけ、できるだけスキンシップをはかるようにしてあげましょう。
まとめ
白内障は、合併症を伴い激しい痛みを引き起こすケースもあります。少しでも異変に気がついたら「歳だから...」、「少し若いけどしょうがないかな」と軽く捉えてしまわずに、しっかりと動物病院で診てもらうことが大切です。