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分離不安の犬の留守番トレーニング|安心できる環境作りのポイント
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愛犬の分離不安に悩む飼い主さんは少なくありません。愛犬の分離不安の原因や対処法・トレーニング方法などをご紹介します。
特に2021年以降はコロナ禍の影響で犬の分離不安とその対策が注目を集めています。中には以前に考えられていたのとは少し違う部分や、知っておきたい事柄もありますのでご紹介していきます。
分離不安とは
愛着のあるもの(飼い主など)から離れることで感じる不安。それは犬の社会性の強さに由来しています。日常では何らかの事情で愛犬が独りになる機会というのはよくあることです。
実は、(たとえ飼い主が意識していなくても)犬はそういった日々の経験を重ねていくなかで、分離に対する不安を徐々に克服してくれています。
「独りになるのはすごく嫌だし不安だけど、ちょっと我慢していれば必ず帰ってきてくれる」ということを、いつのまにか犬は学んでくれているのです。しかし中には分離の不安を克服することができず、むしろ不安を強めてストレスとなってしまう犬がいます。どんな原因があるでしょうか。
原因1
許容範囲を超えた分離不安にさらされる機会が繰り返されてしまうこと。
分離不安の克服度がまだまだ低い段階であるにもかかわらず、その犬にとって長すぎるお留守番などが何度も繰り返されると、分離不安に対して過敏になってしまうことがあります。特に、心理的な発達に重要な子犬期にそのような機会が多いと、その傾向はさらに強まってしまうようです。早い段階(月齢)で親元から離された犬は、そのリスクがあることを心得ておきましょう。
原因2
日頃の生活で十分に愛情を注がれないこと。
愛情不足は不安やストレスへの耐性を下げて、愛情が十分の場合に比べて分離不安を強めてしまうと考えられています。
原因3
飼い主の愛情のかけ方に歪みがある場合。
人と同じように、犬も心身の成長とともに自分の保護者である飼い主への依存の仕方やその度合いが変化していきます。成長とともに心理的な自立が徐々に促されるのです。
しかし、犬との関係の深め方が適切でないと、その自立を阻害してしまうことがあります。
特に人と犬が常にべったりと接している場合。愛情で結ばれているというより、お互いに依存しすぎている状態です。たとえわずかな時間でも離れたときに、日常の依存の分、犬には分離時の不安が大きく感じられ、ストレスにつながってしまいます。
基本的な分離不安克服のためのトレーニングの方法
1.ほんの数分間(場合によっては1分未満)、隣の部屋などで犬を独りにしてみます。
2.静かにしていられる(そわそわしたり鳴いたりしていない)ことを気配で確認しながら何度もそれを繰り返して慣らしていきます。
3.徐々に時間を延ばしたり(分単位)、離れる距離を延ばしたり(別の部屋~外)します。
これも静かにしていられることを確認しながら、繰り返して慣らします。
4.短いお留守番から試します。初めは長くても15分~20分以内からスタートです。
ココがポイント
- いきなり犬を独りにしないこと、もしくは独りにしすぎないこと
- 必ず犬の許容範囲内で実践すること
- 初めは時間、次に距離、と別々にそれぞれの難易度をあげていきましょう。
- 独りでいるときに何かしら楽しい経験を提供してあげると良いでしょう。
- 与えっぱなしにしても安全なオヤツやおもちゃを用意してあげるのも良いでしょう。
- オヤツ、おもちゃの誤飲事故にはじゅうぶんに注意しましょう。
犬の許容範囲を超えてしまうと、分離に対する不安をかえって強めてしまうので要注意です。 犬の許容範囲内かどうかわからない場合は、一度は専門家の指導を仰いだほうが安心です。
新しい分離不安のための新しいトレーニングの考え方
分離不安のためのトレーニングと言えば「飼い主は確実に戻ってくるということを学習するために短時間の不在から慣らしていく」というのが今までのセオリーでした。
けれど犬の分離不安専門のトレーナーであるトレイシー・クルーリック氏は、たとえ短時間でもいきなり不在になるのではなく、もう少し前の段階から犬が心地よくリラックスしていられるように慣らしていくことを勧めています。
歯磨きや爪切りのトレーニングで、歯ブラシや爪切りを見せるだけのところから始めて犬がリラックスしていられるなら次の段階に進むのと同じです。
多くの犬は飼い主が出かける準備をすることで「お留守番をするんだな」ということを予測します。出かける準備が身支度であれ鍵を手に取ることであれ、人間は今いる部屋から移動します。慣らしていくのはこの段階からです。
飼い主が立ち上がって部屋を出ようとした時について来る、または首や体を起こした場合、犬はリラックスしていません。キュンキュン鳴く、口の周りを舐める、あくびをする、吠えるなどもストレスを示す行動です。
このようなストレス行動やリラックスしていない状態が見えたら「立ち止まる」「少し犬の方に戻る」などの状態で犬がリラックスするのを待ちます。
部屋の出入り口まで移動しても、まだドアノブや引き戸に手をかけずにすぐに犬のところに戻って座り、また犬がリラックスするのを待ちます。
次のステップでは部屋の出入り口まで来てドアや戸を半分だけ開けます。犬が全く気にしなくなるまで「半分開き」を何度も繰り返します。半分開きが大丈夫になればドアを全開にして同じことを繰り返します。
さて、次のステップでやっと部屋の外(と言っても屋外ではなく家の中)に出ます。部屋から出たらドアや戸を閉めますが1秒または2秒で犬のもとに戻ります。犬が大丈夫であれば外に出る時間を秒単位で延長していき、最終的に屋外に出ますが、部屋の中の犬がリラックスしているかどうかはペットカメラやスマホなどを駆使して観察してみてください。
これらのセッションを全て一度にする必要はありません。1日に1〜2回最長でも30分のセッションで少しずつ進めていきます。「飼い主は常に戻って来る」ということを教えるのではなく「飼い主がドアから出ていっても悪いことは起こらない」と犬が学習することが大切なポイントです。
「ドアから出て1分間待つ」と画一的に時間で人間の行動を決めるのではなく、犬がリラックスしていることをトレーニングの指標にすることで犬は怖い思いをしないで済みます。分離不安を抱えている犬には、たとえ1分間でも「誰もいなくなる恐怖」の時間を持つのは辛いことです。
リラックスまでの時間は犬によって違います。愛犬のリラックスやストレスを読み取るスキルも必要です。自分一人では難しいと感じる場合は「犬のリラックスに焦点を合わせる」ことを理解してくださるトレーナーなど専門家に相談しましょう。
一人で悩まず、専門家に相談しよう
上記でトレーニングが難しいと感じたらトレーナーなど専門家に相談と書きましたが、分離不安の症状が強い場合は医療的な対応を視野に入れた方が良い場合があります。
イヌ科の動物は群れで暮らすことで安全を確保してきたので、犬が単独になった時に不安や恐怖を感じるのは自然なことです。しかし犬によっては不安や恐怖が特に強い個体がおり、適切に対処されないとパニックで怪我をしてしまったり、ストレスから強迫性障害につながることもあります。
家具などへの破壊行動や、前肢など体を舐め続けたり自分の尻尾を追いかける常同行動があまりにもひどい場合には、獣医師の診断による抗不安薬の投与などで犬と人間両方の生活の質が改善することもあります。
まずはかかりつけの動物病院で受診や相談をして、必要に応じて専門医の紹介をお願いするという選択肢は常に頭に置いておきましょう。具体的には獣医行動診療科認定医に相談することもそのひとつとなります。
また「犬が単独になるのが不安ならもう1頭迎えれば良いのでは?」「うちは多頭飼いだから大丈夫」と考える人も多いかと思います。
この点についてスイスとドイツの認知行動学の研究者が、多頭飼育と単独飼育の犬の分離不安を比較調査した結果を発表しています。留守番中の犬の様子を録画して分析したところ、分離不安につながると考えられる行動は多頭飼育の犬たちの方が多かったのだそうです。
他の犬がいることで助けられる面もあると考えられますが、犬同士で不安感情の影響を受けたり、その結果としてストレス行動や興奮性の行動につながるようです。一方で単独飼育の場合は留守番中にリラックスしている犬が多かったとのことでした。
犬の分離不安は他の犬に頼るのではなく、飼い主と獣医師やトレーナーなどの専門家で対応すべしと心得ておくのが良さそうです。
まとめ
犬の分離不安は犬がネガティブな精神状態になること、吠える声が近所迷惑になったり破壊行動がもたらす負担などで飼育放棄の原因になりやすいことから、犬の福祉のためにも大きな問題です。
イギリスの犬の飼い主へのアンケート調査では、パンデミック前に比べてパンデミック中の留守番の時間が大きく減少した犬ほど、改めて留守番をすることになった時の分離不安行動が多かったという報告もあります。
今まで留守番中の分離不安についてあまり心配していなかったという方も、知識を持っておくと必要な時に対策が立てやすくなります。犬たちがリラックスしてお留守番できるようにすることは飼い主さんの心の平安のためにも大切ですね。
【参考記事】
https://www.separationanxietyandbeyond.com/blog/look-for-relaxation-rather-than-anxiety-in-separation-anxiety-training
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2021.105463
https://doi.org/10.3390/ani12040482
※この記事はガニング亜紀さんがライティングした原稿を元にGREEN DOG & CAT ライフナビ編集部が編集しお届けしています。