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音を怖がる犬には意外な理由がある?克服のためのトレーニング方法もご紹介
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実は音を怖がる犬には意外な理由が隠れていることもあれば、特定の音を嫌がっても仕方ない理由もあります。飼い主が知識をつけることで、愛犬はもちろん周囲の人間にとっても助けになります。そこで今回は音を怖がる犬の行動が何を意味するのかをご紹介します。
※この記事はオウンドメディア「犬のココカラ」に掲載されたガニング亜紀さんの原稿を元に、GREEN DOG & CAT ライフナビ編集部が編集してお届けしています。
日常生活の音が犬のストレスになっているかも
花火や雷といった非日常的な音だけでなく、日常生活の中で毎日のように聞こえて来る音が犬のストレスになっていることもあります。
2021年にカリフォルニア大学デービス校獣医学部が飼い主への聞き取りとインターネット上の犬の動画の検証によって調査したところ、日常生活の中の音に対してストレス行動を示す犬が多かったことを報告しています。
飼い主への聞き取り調査では約3割の犬が、
- 家電の作業終了を知らせるピーピー音
- 各種機器の電池切れを知らせる警告音
- 煙感知器やガス漏れ警報器の警告音
に対して隠れる、震える、ハアハア喘ぐなどのストレス反応を示すとのことでした。
これらは高周波の音に分類され、人間よりも高周波の音に敏感な犬の耳には刺激が強く痛みを伴う可能性さえあるものです。動画の検証でも犬が強い反応を示していたうちの8割以上が高周波の音でした。飼い主が気づいていないだけでストレスを感じている犬はもっと多いとも考えられます。
掃除機や洗濯機などが稼働している時の音は低周波に分類されるので、遠くで少しだけ音が聞こえる状態でトリーツなどを使って少しずつ慣らすこともできますが、高周波の音は痛みや不快感を伴うためこの方法は使えません。警報器の音などは必要があって鳴っているわけで聞こえないと危険ですが、犬への影響を最小限にするために日頃から知識と対策を持っておくことが大切です。
我が家の犬も洗濯乾燥機の終了ブザーが嫌いだったので、終了直前の時間にスマホのタイマーをセットして音が鳴る前にスイッチを切るようにしていました。テレビなどからの予期せぬ音で犬が驚いた時にはすぐに他の部屋や外に連れ出して気分転換を図ることもありました。
平気だった音を怖がるようになった場合
犬が以前は平気だった音を聞いて怖がるようになった場合、身体のどこかに痛みがあることも考えられます。2018年にイギリスのリンカーン大学とブラジルの動物行動学者が音に強い反応を示すようになった犬の症例を調査したところ、筋骨格系の痛みを持っている犬ほど音への反応が大きかったことを発見しています。
大きな音や突然の音で体がビクッとして筋肉が緊張することで、炎症のある筋肉や関節に負担がかかって痛みを引き起こすと考えられます。花火や雷の音の他に散歩中に自動車やバイクの音を怖がる例が多いようです。音がするたびに身体が痛くなれば怖くなるのも無理はありません。痛みの治療をすることで音に対して震えやハアハア喘ぐなどのストレス反応が消えたという報告もあります。
音への恐怖に限らず以前はなかった行動上の問題が出てきた場合、トレーニングを考えるだけでなく疾患による痛みや不快感を疑って診察を受けることが大切です。動物行動治療の専門家は、治療を依頼された問題行動のうち何らかの身体の痛みが原因となっているのに疾患が見落とされている例が非常に多いと警告しています。
また太り気味の犬は関節の疾患になりやすく痛みがあるために、不安や恐怖に関連する行動上の問題が多くなりがちです。体重管理はこのような意外なところにも影響を及ぼすので気をつけたい点です。
「犬が音を怖がるなんていうことを獣医さんに相談してもいいの?」と思われるかもしれませんが、病気の可能性は最も優先して考えるべきことです。問題となる行動が見られた時の状況や時間帯を記録しておくことで、獣医師が原因を突き止める助けにもなります。
花火の音が怖い犬への対策についての調査結果
犬の恐怖感情については、動物行動学や比較心理学、遺伝子科学などさまざまな方面から研究が行われています。
その中で少し異色だったのは2020年に発表されたスイスのベルン大学のコンパニオンアニマル行動学の研究者が、一般の家庭犬の飼い主を対象に行ったオンラインアンケート調査です。
花火の音を怖がる犬の飼い主1,225人に、花火イベントに備えてどのような対策を行ったか、イベント中の犬の様子はどうだったかなどについて回答を集め、その結果が分析されました。
調査結果から分かった、7割以上の人が効果を実感した対策は「条件づけを利用して犬に働きかける」方法でした。条件づけの方法と僅差で精神安定剤などの処方薬が続きました。
サンダーシャツなど犬の体に適度な圧力をかける方法は4割強の人が効果的だったと回答し、エッセンシャルオイルやフェロモンスプレーなどの代替療法では効果があったと感じた人は約3割でした。
怖がる音を克服するための条件づけとは
条件づけという言葉は犬のトレーニングの説明で聞いたことがあるという方も多いかと思います。よく耳にする言葉は『オペラント条件づけ』と『古典的(またはレスポンデント)条件づけ』です。
でも、これらの言葉を聞いてもどんな意味なのかは分かりにくいですね。実は私もこれらの言葉にちょっと苦手意識があります。
そこで、ここではオペラントの代わりに『行動の条件づけ』、古典的の代わりに『反射の条件づけ』と呼んでいきます。少しとっつき易くなったでしょうか?
・行動の条件づけ
何らかの行動の後で良いことが起きれば、犬はその行動を増やします。
反対に行動の後で嫌なことが起きれば、犬はその行動を減らします。
例えば、目の前に出された手にタッチをするとトリーツをもらえることが繰り返されると、犬はハイタッチをするようになります。これが行動の条件づけです。
・反射の条件づけ
多くの方がご存知の『パブロフの犬』あれが反射の条件付けの元祖です。
犬に食事を出す際に毎回ベルの音を鳴らすと、犬はベルの音を聞くだけでヨダレを出すようになったというものです。
何らかの条件で身体が反射的に反応するよう条件づける方法です。
花火の音が怖い犬の克服方法に利用されたのは反射の条件づけです。
厳密には反射の条件づけの中の一つである『拮抗条件づけ』と呼ばれる方法なのですが、これも簡単に『反対の条件づけ』と呼びます。
条件づけトレーニングの方法2つ
これらは花火のイベントの日だけ行うのではなく、日頃から繰り返し実行しておく長期戦の対策です。
① 反対の条件づけ
まず花火や雷など犬が怖がる音をダウンロードなどで入手します。効果音のキーワードで検索するとフリー素材がいろいろ見つかります。
音を犬が絶対に怖がらないくらいの小さい音で再生して、その度にトリーツを与えます。決して犬を怖がらせないよう注意深く少しずつ音のボリュームを上げていきます。
これを繰り返すことで、音(不快)が聞こえるとトリーツ(快)がもらえるという反対の条件づけが起こり、音に対する犬の不快感が打ち消されていくというわけです。
怖い音を最初は小さく、少しずつ大きくして馴らしていく方法は脱感作法と呼ばれます。
反対の条件づけの方法は花火や雷に限らず、犬が怖がるものが分かっている場合には応用して使えます。例えば掃除機が怖い場合は、犬から遠く離れた場所で掃除機のスイッチを入れてトリーツという方法を根気強く繰り返します。
トリーツはチーズやレバーなど香りが強くて犬にとって魅力的なものをごく小さく切って少量ずつ与えます。
② リラクゼーショントレーニング
これは普段から習慣のように行っておくと、いろいろな場面で重宝な条件づけです。
静かな環境で犬の体をマッサージしたり、ゆっくりと長いストロークで撫でたりして犬をリラックスさせます。その時に「リラックス〜」「いい子ね」など毎回決まった言葉をかけてリラックスした状態と言葉を関連づけるようにします。そういう時に犬が好む香りをほんのり漂わせておくのもいいでしょう。飼い主の言葉かけ、香りの記憶によって、怖い音がした時にマッサージ無しで言葉だけでも犬の心と体を快モードに切り替えることや、香りによってリラックスモードに切り替えるサポートが期待できます。
どちらの方法も犬にも人にも負担がかからず、怖いものを克服する対策を立てながら愛犬との絶好のコミュニケーションにもなります。
声かけだけで犬の心身の緊張を和らげることができれば、病院での診察時などにも役立ちます。香りの場合は、ほんの少しティッシュなどに漬けて持って行くこともできるでしょう。
ベルン大学の研究者は、新しく犬を迎えた時には、大きな音に対して恐怖を示さない子でもこれらの条件づけを行うことを推奨しています。
リラックスやトレーニング時におすすめの商品
リラックスに導く香り
ピュアエッセンシャルオイル マージョラム
TISSERAND不安やストレスを鎮めて心身ともにリラックスさせてくれる香りです。
ピュアエッセンシャルオイル ラベンダー
TISSERANDラベンダーは、アロマオイルが初めての場合におすすめ。最も用途が広いポピュラーな精油です。
トレーニング時におすすめのトリーツ(おやつ)
アブソルート エアドライドッグトリーツ サーフ&ターフ(ラム&サーモン)
アブソルートお肉感たっぷりのやわらか肉厚ジャーキーです。小さくちぎりやすくトレーニング時にも使いやすいです。
フリーズドライチーズ
WITH GREEN DOG超小粒サイズにしてフリーズドライ加工にしました。小さくても嗜好性抜群な点が人気です。
まとめ
音が犬にとって不安や恐怖を引き起こす場合、そこには音の周波数や身体の痛みが関連している可能性があることをご紹介しました。
人間が生活していく上では動物にとってストレスを感じる音を避けられない場合もあります。しかし聴覚が優れた犬にとって、この音は自分の想像以上に恐怖やストレスになるかもしれないという認識を持っていれば、いざという時の対応にも違いが出ます。音への恐怖と身体の痛みとの関連も知っていれば早期に治療をすることができます。
犬によっては花火や雷の後は数日にわたって体調を崩す場合さえあるので、怖いものに対する対策は犬の福祉のためにとても大切です。
コントロールされずに放置された恐怖感はパニック状態を引き起こして、脱走や周囲の人や動物への攻撃に転じる可能性もあります。
ぜひできる方法から試したり、防音対策を強化したりして、愛犬が怖いものを克服するお手伝いをしてあげてください。
【参考URL】
https://doi.org/10.3389/fvets.2021.760845
https://doi.org/10.3389/fvets.2018.00017
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S155878782030037X?via%3Dihub
※この記事はオウンドメディア「犬のココカラ」に掲載されたガニング亜紀さんの原稿を元に、GREEN DOG & CAT ライフナビ編集部が編集してお届けしています。