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犬の多頭飼いのメリットやデメリット、よくあるトラブルの対処法のポイント
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犬との暮らしの楽しさを知ってしまうと多頭飼いをしたいと思う家庭は少なくなりません。
今回は、犬の多頭飼いについて、メリットやデメリット、迎える前の注意点、生活を始めるための準備、先住犬へのストレスケアや相性などについて解説します。
多頭飼いをする前の心構え
- すべてのパートナー(愛犬)たちのお世話をするだけの時間的余裕はありますか?
- すべての愛犬たちが快適に暮らせるだけの空間的な余裕はありますか?
- すべての愛犬たちの終生を養えるほどの経済的余裕はありますか?
- 先住犬の現状に問題(健康面、行動面などのトラブル)はありませんか?
- 一緒に暮らす家族全員の同意は得られていますか?
多頭飼いのメリット
犬は、高い社会性のある動物であるとともに、柔軟性も兼ね備えた動物です。そのため異種の動物であるヒトやその他の動物とも仲良く共存することができます。猫と一緒に仲良く生活している犬もいますし、外国では馬小屋や羊舎で寝泊まりしている犬もいます。
しかしやはり犬にとっては、他の犬と関わったり犬からしか学べないことを学んだり、群れとしてともに暮らすことは、犬の基本的なニーズ(自然な欲求)であり必要不可欠なものです。
多頭飼いをするということは、そういう犬のニーズを満たしてあげることができるというメリットがあります。
家人が家を空けて留守番をさせなくてはならないとき、同居の犬がいると、寂しい思いをさせることはグッと減ります。そもそも犬は群れで暮らす動物ですから、ひとりぼっちは苦手なのです。
そのほか、先住犬に教えた家庭ルール(たとえばトイレの場所など)を、新入り犬が模倣して短期間で学んでくれる場合もあります(すべての新入り犬がそうとは限りません)。
2頭目はレスキュー犬、いわゆる保護犬を家族として迎える方が最近増えています。ヒトの都合で失われてしまう命を1頭でも減らすということにおいては、大きな意義のある選択ともいえます。
多頭飼いのデメリット
メリットがあればデメリットもあります。いいことばかりではありませんので、安易に2頭目を増やそうと思うのは賛成しかねます。しっかりと熟考することが大事です。
まず、単純に「わが子」として「責任を持たねばならない命」が1頭分増えるわけですから、手間や時間、金銭的な負担も増えます。食費、獣医療費、ペット保険料なども約2倍になると考えてよいでしょう。
サイズの違う犬で、また年齢や犬種などからくる運動欲求量に差があれば、2頭を一緒に散歩に行けない場合もあります。散歩の時間が2倍になる可能性があります。また、トレーニングの時間、病気になったときなどの緊急事態の可能性も約2倍になります。
家の中の犬空間(スペース)の確保も必要です。ケージは、犬が落ち着いて寝られる場所としてそれぞれに用意してあげる必要があります。ベッドやトイレの置き場所、工夫も必要となるでしょう。また、車で移動する際のケージやクレートが2つ必要となりますから車の大きさも検討が必要です。家族で旅行に行くときは、ホテル利用は2頭分になり、一緒に連れて行くときには、犬のための荷物(ごはんや食器など)が増えることを考慮しないといけません。
先住犬が家庭ルールを教えてくれるというメリットと同時に、新入り犬が先住犬に好ましくない行動(飼い主にとって都合の悪いこと)を教えてしまうこともあります。また先住犬が、飼い主にとって都合の悪い行動をすでにしていた場合(たとえば要求吠えや不適切な場所での排泄など)、それを新入り犬が真似してしまい、悩みの種が2倍になってしまうことがあります。
さらに、先住犬にも配慮が必要です。今まで自分だけに向けられていた飼い主の愛情や注目が、新入り犬に分散されてしまうということが起こります。それをあまり快く思わない犬もいます。新入りを迎えることは、先住犬のストレスになりかねないことも理解しておきましょう。不満を分かりやすく表現(飼い主の注意をひこうと吠えるなどの行動)する犬もいますが、なかにはじっと我慢してストレスをため込んでしまう犬もいるので注意が必要です。
また犬同士の相性もあります。小競り合いや大ケガするほどの喧嘩といった犬同士のトラブルを避けるため、別々の空間に隔離しなくてはならなかったり、散歩も1頭ずつ連れ出さなくてはならなかったりする場合があります。
「仲良しの2頭の多頭飼い」という心躍る光景は、必ずしもそうなるとは限らないのです。そのために結局どちらかの犬を手放すことになったりしたら本末転倒。そのようなことにならないように、2頭目を迎えるということは、用意周到な準備と覚悟が必要だということを肝に銘じておかないといけません。2頭目だけでなく、3頭目と頭数を増やすときも同じことがいえます。
犬に相性はあるの?
犬は私たちと同じように感情や意思を持った生き物ですから、当然個々で好き嫌いがあり、お互いに相性があります。とくに注意が必要なのは、思春期(犬種にもよりますが、だいたい生後6か月から1歳頃)以降で、自己主張が強くなってきているオス同士の組み合わせです。
経験がまだまだ浅いため、自分の主張を下げるべきかどうか、下げるならどのタイミングがいいのか、といった判断ができず、お互い引くに引けなくなって大喧嘩に発展する場合があります。
一度こじれてしまうと、元通りの関係になるのはなかなか難しいかもしれません。そのような争いはオスとメスのペアよりもオスとオス、メスとメスのように同性同士の方がトラブルは起きやすいようです。
互いの年齢や性格も慎重に見極める必要があります。パピーとシニアでしたら、一日の過ごし方や時間のペース、運動量などに違いがあるので、特に注意が必要です。生活ペースが違ったり、散歩の時間が違ったり、元気のある子犬をうるさいと老犬が感じて、ストレスがたまり、免疫力が下がってしまう可能性もあります。年の差がある犬を迎えるときは、シニア側の体力、健康状況などを考えてあげる必要もあるでしょう。面倒見のいい犬や適応力のあるシニアであれば、子犬のよき先輩となってくれる場合もあります。年の差があるために、お互いうまく折り合いをつけて、丸くおさまるペアもいます。
また性格についても、たとえば元気ハツラツな犬と比較的おとなしくて引っ込み思案な犬とでは、うまくかみ合わないこともあります。ほかにもヒトでは気がつかないような、犬にしかわからない好き嫌いポイントがあるかもしれません。
片方に環境適応能力があり、相手に合わせてくれる性格で、かつそれをストレスと感じない大らかなフレンドリーな性格の犬であれば、一緒に問題なく生活できることもあるでしょう。
ただこれらもあくまで傾向にすぎません。相性というのは、それぞれの組み合わせで1組1組ごとに違うからです。いろいろな要因、すなわち年齢、性格、性別、犬種、体格、第一印象、遊び方など、さまざまなことが複雑に絡み合って、相性がいい、悪いという関係が構築されます。
犬を擬人化するのはよくありませんが、ヒトでも、お見合い相手に対して、「この人は絶対に相性がいい人だ」と言い切るのは難しいですね。実際に生活してからわかることもあります。価値観やお互いの好みや趣味(さしずめ犬だったら、インドア派かアウトドア派か)などが絡み合って相性のいい相手が見つかる、と想像すれば少し犬の気持ちに近づけるかもしれません。
多頭飼いの始め方
ケージの準備
愛犬たちには、ケージ(通気性のよい柵タイプで天井もある四角い箱状のもの)やクレート(プラスチック製の箱状のもの)などのハウスを頭数分用意してあげましょう。ハウスは、犬たちを閉じ込めるものではなく、それぞれに個室を用意してあげるようなものと考えてください。犬の心の安定のためには、静かにゆっくり落ち着ける場所が必要です。これは大型犬でも小型犬でも変わりありません。どんな大きさの犬でも個室は必要です。
【参考商品】
・ハウスとしてもお出かけにも安全設計のクレート
複数の移動時にもうれしい軽量タイプ。愛犬に合わせて6サイズから選択できます。
ベッドの準備
同じくベッドも頭数分、別々に用意してあげましょう。新入り犬用に新しいベッドを用意してもかまいません。先住犬に新しいベッドを用意して古いベッドは新入り犬におさがりとして与えてもいいでしょう。ただ、慣れたベッドをそのまま先住犬に使わせてあげた方が落ち着く場合もあります。先住犬や新入り犬のそれぞれの性格に合わせて、様子を見て判断してください。
なかには、頭数分用意してあげたにもかかわらず、ひとつのベッドで一緒に寝る愛犬たちもいますが、それはそれでかまいません。大事なのは「一緒に寝るのか」「別々に寝るのか」、その選択肢が愛犬たちに与えられていることです。
トイレの準備
室内で排泄をさせる場合、愛犬たちのトイレはいくつ用意してあげたらいいのでしょうか。それは、各家庭のスペースや愛犬たちの状況で変わってきます。まず、現実的に複数のトイレを置くことができるスペースがあるのかどうかです。そのうえで、頭数が多かったり、排泄の頻度が高かったりしてトイレが汚れやすい場合、そして、飼い主の都合(共働きで犬の留守番時間が長いなど)で頻繁にトイレシーツの交換ができない場合などは、複数のトイレを用意してあげた方が衛生的です。
ただし、複数のトイレを用意する場合は、それぞれが自分たちの排泄場所であることを認識させるためのトレーニングも必要です。 トイレ・トレーニングにおいては、トレーニング用のペットシーツもあるので試してみてもいいかもしれません。
いずれにせよ、排泄というのは生理的な基本欲求ですから、愛犬たちにとって不都合が生じないようにしてあげるのが大前提です。
優先順位
優先順位の付け方については諸説ありますが、GREEN DOG & CATでは、お互いの関係性については基本的に犬たちに任せるのが良いと考えます。2頭それぞれで、大切に思うこと、絶対譲れないことなどに違いや程度の差があります。相性が良い犬同士なら、生活の中でお互いのことを知り、少しずつうまく折り合いをつけて、それなりのルールを築いていってくれるはずです。
注意が必要なのは、先住犬という理由だけで、すべての面で優遇しないこと。仮に先住犬だからと大事にして優先すると、当事者(2頭)からすると、不自然な関係を強いられている例もあります。まずは飼い主が犬同士の関係をよく観察することから始めましょう。ただし、精神的、身体的にストレスがかかって日常生活に支障が出るような状況の場合は、もちろん飼い主の介入が必要です。
犬同士の会わせ方
いきなりお家に連れてきて迎えるのではなく、事前に数回引きあわせて相性を確かめるのが理想です。最初は、十分に距離を取って、お互いの存在を目やニオイで確認させるところから始めます。問題なさそうなら、徐々に距離を縮めて接触させたり、その接触の時間を伸ばしてみたりします。
成犬同士を接触させる場合は、できれば経験豊富なドッグトレーナーや専門家のつきそいがあったほうが安心です。片方の身体の自由を奪って(抱っこや保定をして)おいて、もう片方に相手(特にお尻)のニオイを自由に嗅がせるといった風景をときおり見かけますが、これはやめておきましょう。犬本来の挨拶の方法ではありません。身体の自由を奪われて他の犬から好き勝手にニオイを嗅がれる、というのは、される側からすれば尊厳を無視された扱われ方です。
多頭飼いの注意点(トラブルと対処法)
レスキューされた犬の場合
それまでの経緯(バックグラウンド)がわからないことが多いので、他犬に対する反応については、より注意深く観察する必要があります。新入り犬を動物愛護団体の預かりボランティアさんや動物福祉団体の施設等から引き取ろうと考えている場合は、今までその犬を直接お世話していた人から詳しい情報を収集しましょう。
先住犬が保護犬だった場合も、たとえばヒト相手にはまったく問題がない犬でも、犬に対してはどうでるかはわかりません。ただし、レスキューされた犬だからといって特別問題視する必要はありません。
先住犬と新入り犬がよくケンカする。仲良くなる方法は?
先住犬と新入り犬の相性が悪くケンカするような場合は、決して無理をせず、慎重に少しずつお互いを慣らしていきます。こうしたケースも、早期に犬の行動に詳しい専門家(トレーナーや動物行動学に詳しい獣医師)に相談しましょう。問題が解消されるまでの間は、愛犬同士は一定の距離を取っておきます。また、ケンカの原因となるものがわかっている場合(食べ物やおもちゃ、ソファーなどの取り合いなど)は、それらの原因を飼い主がしっかり管理することが重要です。一方、飼い主から見て、なぜケンカが勃発したのかわからない場合でも、犬からしてみれば何かのきっかけ、引き金があるはずです。
思いがけない交配、妊娠を防ぐためには?
想定外の交配、妊娠を防ぐには、後から迎える新入り犬の性別を先住犬に合わせることがいちばん手っとり早い対策です。オス・オスの組み合わせ、メス・メスの組み合わせといった同性同士なら、交配の心配はありません。もし、異なる性別の組み合わせにする場合は、不妊処置(オスなら去勢手術、メスなら避妊手術)をすることが確実な予防策です。繁殖行動は生きものとして子孫を残すという非常に強い本能です。不妊処置なしでオス・メスを同時に多頭飼いする場合、飼い主によほどの経験と知識、そして管理能力が必要です。
近隣トラブルを防ぐためには?
犬との生活を始めるにあたり、鳴き声や吠え声、臭いなどに関するご近所への配慮は必要不可欠。多頭飼いともなれば、なおさら注意が必要です。特に吠え声(警戒吠えや要求吠え)は群れ(同居犬)に同調して始まることも多く、相乗効果で2倍にも3倍にもなる場合があります。防音対策はもちろん、何より十分なしつけが欠かせません。これも問題が大きくなる前に早めにトレーナーに相談をしましょう。
また、警戒吠えをしやすい番犬気質の強い犬や興奮しやすい犬ではなく、おっとりした性質の犬を新しい愛犬に選ぶこともひとつの作戦。保護犬などで、すでに性格がわかっている温和な成犬を迎えるというのもよいでしょう。
また、賃貸住宅に住んでいる方は、契約の条件内容を必ず確認しましょう。徐々にペット飼育可の物件も増えてきていますが、たとえば「小型犬1頭のみ」「体高~センチまで」といった条件付きの物件もあります。もちろんのことながら、契約にある約束事を破ることがないようにしなければなりません。確認を怠った、もしくは契約を守らなかったばかりに、退去せざるを得なくなった、あるいは、一方を手放すことになってしまった、といったことにならないようにしましょう。
不安があるまま問題を放置しない
初めての多頭飼育、初めての保護犬の受け入れ、先住犬との関係性などで、もし不安がある場合には、わからないまま放置しているとますます問題が大きくなる危険性もありますので、専門家に早めに相談しましょう。
ストレスが少ない多頭飼いのコツは?
できるだけ愛犬たちにストレスをかけずに、多頭飼いの生活を送るためにはどうすればよいのか、ポイントをまとめてみます。
- 新入り犬を迎えるのは、先住犬との生活が安定しているときにする
- 犬同士の関係は基本犬に任せてもよい
- ただし、飼い主はしっかり犬たちを常に観察し、必要に応じて介入すること
- 飼い主はそれぞれ1頭ずつとの時間をできるだけしっかり取ること
- 犬たちの個室となるような空間(ハウスやベッド)をそれぞれの犬に用意してあげること
まとめ
多頭飼いにはメリットだけでなく、デメリットもあります。それを理解しないまま安易に多頭飼いをするべきではありません。預かる命が増える分だけ、それと比例して飼い主の責任も増えます。初めて犬を迎える場合と同様に、2頭目、3頭目を家族に迎える場合にも次のことについてしっかりと考えましょう。
・本当に迎えるその命と一生に責任が取れますか?
・その犬を迎えることで、家族全員が幸せになれますか?
家族でよく話し合い、全員が同じ気持ちで迎える決断をしてあげましょう。