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犬がウンチの時にくるくる回るのは磁場のせい?犬の方向感覚についてのあれこれ
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皆さんのパートナーである愛犬は道順を覚えたり方角を見極めたりするのが得意でしょうか、それとも方向音痴でしょうか。人間にも初めての場所であっても行くべき方向が感覚的に分かる人がいるように、犬にも方向感覚が優れたタイプがいるようですが、それはどのような仕組みなのでしょうか。犬の方向感覚については興味深いリサーチがいくつか発表されています。
※この記事はオウンドメディア「犬のココカラ」に掲載されたガニング亜紀さんの原稿を元に、GREEN DOG & CAT ライフナビ編集部が編集してお届けしています。
我が家の2頭の犬の方向感覚

私は現在2頭の犬と暮らしています。いろんな面でそれぞれに個性的で面白いなあと思うことが多いのですが、2頭の方向感覚の違いもその1つです。
散歩をする時、人通りの少ない広い場所では犬たちが行く方向を選んで好きなように歩かせることがあります。
そういう時、中型雑種のニコは辿り着きたい目的地を決めているようで明確な意思を持ってしっかり歩きます。分かれ道があれば立ち止まって少し考えてどちらかの道を選びます。側で見ているとニコなりの理由があるのだなと感じます。
行き止まりがあればどんな風に回り道をすれば元のルートに戻れるかも理解しているようです。
歩いたことのあるルートは全て覚えているようで、もしも散歩中に道に迷うようなことがあってもニコがいれば無事に家に戻れるという安心感があります。
一方、もう1頭のミニチュア・ピンシャーのニヤは先頭を歩かせると自信たっぷりにスタスタ歩くのですが、しばらくするとハッとして周りを見回し、助けを求めるように私の横にくっ付いて来ます。
分かれ道にぶつかると「どっちに行くか選ぶのは自分の仕事じゃない」と言わんばかりに私かニコの後ろに回ります。
もしもどこかで迷子になってしまったら、ニヤが自力で戻って来ることは無理でしょう。(代わりに持ち前の対人スキルの高さを生かして、保護してくれる人を素早く見極めると思われます。)
犬はコンパスのように地球の磁場を感知している?

我が家の犬たちはこのように方向に対する感覚が大きく違います。犬の中には非常に優れた方向感覚を持っている個体がいるのは確かです。なんらかの事情で数十キロ(時には数百キロ)も離れた場所から自力で飼い主のところに戻って来た犬のエピソードは古今東西たくさんあります。
このような犬の飛び抜けた方向感覚は、地球の磁場を感知する能力で説明できる可能性があるそうです。
2013年にチェコのチェコ生命科学大学とドイツのデュースブルク・エッセン大学の研究チームが、犬は排泄する時に地球の磁場の南北の軸に沿って体の向きを揃えるのを好むことを発見しました。これは犬が磁場を感知できることと、犬の行動が磁場の影響を受ける可能性を示しています。
2016年にはドイツのマックス・プランク研究所の脳研究のチームが、犬は目の網膜に磁場を感知するとされる「クリプトクロム1a」という光感受性分子を持っていることを発見しました。渡り鳥など鳥類の優れた方向感覚はこのクリプトクロム1aによって磁場を知覚できるからだと言われています。この研究によって犬を含むいくつかの哺乳類は渡り鳥と同じシステムで地球の磁場を感知していることが示されました。
地球の磁場を感知することが犬の行動に及ぼす影響

2020年にはチェコ生命科学大学の研究チームが、犬が馴染みのない場所でも磁場を感知して方角を知覚している可能性を発見しました。
リサーチのための実験には10犬種27頭の猟犬が参加しました。広い森の中で獲物を追って走り回り最終的にハンドラーの所に戻って来る猟犬は優れた方向感覚と帰巣能力を持っていると考えられるからです。
犬たちはカメラとGPS追跡装置の付いたカラーを装着して森に連れて行かれ、ハンドラーから放たれた犬が元の位置に戻って来た時のルートがカメラとGPSの記録を元に分析されました。
実験のための遠足は合計622回行われ、うち約64%は往路と同じルートで戻って来たのですが、往路とは違うルートを使った時に犬はある地点で一旦停止して南北に約20メートル走るという行動を見せることがありました。この行動の後、犬はより効率の良い最短ルートを使って戻って来たのだそうです。
研究者は犬が南北に走ることで磁場を感知する機能を方位磁石のように使い、自分が今どこにいるのかを理解しているのだと考えています。その上で犬は往路の記憶や嗅覚や視覚を併せて使い、元の地点に戻るルートを把握するのだろうということです。
犬が元の場所に戻って来るためには、体内でとても高度で複雑な機能が働いていることに改めて驚かされますね。
まとめ

犬が優れた方向感覚を見せる時、体内にある地球の磁場を感知する機能を使っていることを示すリサーチのいくつかをご紹介しました。
このような研究の報告を見ると、犬が持っている能力に感心すると同時に、能力の個体差についてもいろいろな思いが頭を巡ります。
前述のように、我が家の2頭の犬は方向感覚に大きな差があります。
「ニコは雑種だけど体型や普段の行動から猟犬の遺伝子を持っているのかもしれない。だとすれば方向感覚が優れているのはそのせいだろうか?」
「ニヤの犬種ミニチュア・ピンシャーは元々畑のネズミを捕るための使役犬。ネズミ捕り犬が長い距離を移動することはなかっただろうから、磁場を感知する能力を生かすことも鍛えることもなくて、ニヤのような子孫ができたんだろうか?」などと想像するのもまた楽しいものです。
リサーチや研究によって新しく判ったことをカジュアルに自分に引き寄せて考えることで、愛犬との付き合い方に新しい気づきや合点が行くことが見つかるかもしれませんね。
【参考記事】
・Dogs are sensitive to small variations of the Earth's magnetic field
・Cryptochrome 1 in Retinal Cone Photoreceptors Suggests a Novel Functional Role in Mammals
・Magnetic alignment enhances homing efficiency of hunting dogs