子犬の甘嚙みの理由と対策|噛み癖改善のしつけ方法とおすすめグッズ
子犬がハグハグと甘噛みするのは可愛い反面、細くて鋭い乳歯があたると痛いものです。果たしてこのまま甘噛みをさせておいてよいのか、悩みどころ。
そこで今回は、子犬の甘噛みの原因や対策、先輩飼い主の体験談や参考商品などについてご紹介します。甘噛みのよくある疑問(Q&A)についてもぜひ参考になさってください。
この記事は専門家が執筆・監修しています
<執筆>GREEN DOG & CATコンテンツ制作チーム
犬に関するさまざまな専門知識をわかりやすく発信する制作チーム。子犬からシニア犬まで、あらゆるパートナー(愛犬)と楽しく暮らすお手伝いをします。
<監修>遠藤 和義(えんどう かずよし)
GREEN DOG & CAT専属ドッグトレーナー、ホリスティックケア・カウンセラー
犬業界でのキャリアは四半世紀以上。 国内外の著名なドッグトレーニングの専門家から知識や技術を学ぶ。同時に、多数の保護犬・保護猫の日常ケアにもたずさわる。 各地のしつけ方教室の運営や動物系専門学校の教員などを経験後、縁あって GREEN DOG & CATへ。GREEN DOG & CAT実店舗やしつけ方教室の運営なども手掛ける。
子犬の甘噛みについて
甘噛みとは?
犬にとって噛む行為は、食事のほかに確認(私たちが手でいろんなものを触るのと同じ)や攻撃、または愛情表現と多岐に渡ります。
そして「噛む」にはいくつかの種類があり、甘噛みとはそのうちのひとつです。
犬の噛みつきの種類
・甘噛み...弱い力で噛むこと
・本気噛み...思い切り力をこめて噛むこと。
本気噛みと甘噛みの違い
本気噛みと甘噛みの違いは、単に力の強さの差だけではありません。甘噛みは主に遊んでいる最中や甘えたい時、要求があるときなどに、軽く噛むものですが、うっかり力強く噛んでしまうことがあります。といって、それが本気噛みではありません。
要は噛むときの情緒(愛犬の気持ちや雰囲気)によって甘噛みなのか本気噛みなのかが分かれます。
子犬が甘噛みをする理由
なぜ子犬は「噛む」のでしょう。主な理由は次の4つです。
理由1 遊びの一環として噛む
遊びの対象が人や犬など仲の良い動物の場合
子犬は、母犬にじゃれついたり、兄弟犬と取っ組み合いをしたりする遊びが大好きです。その遊びのなかで、よく相手の身体をハグハグと噛みます。これは人に対してもよくやる遊びです。もちろん、遊びなので本気で噛むわけではありません。
遊びの対象がモノの場合
犬は、獲物を捕食する狩猟本能や好奇心に基づく探索欲求があります。対象物を獲物に見立てときは、捕食行動(獲物を探す、追う、飛びかかる、息の根を止める、運搬する、解体する、等々)を反映させた遊び方をします。好奇心で対象物に近づいたときは、まず目で確認→近づいてニオイを嗅ぎ→口の中に入れてみて、噛み噛みして確認をし、モノ遊びに発展していきます。
監修者コメント
捕食行動を反映させた遊びは、モノだけに限らず、人や他の動物に対しても見られます。
理由2 コミュニケーション
甘えたいときやかまってほしいときなど、自分の気持ちや欲求を表現するための手段として、犬はよく口を使います。これも甘噛みの一つで、コミュニケーションをとっている行動です。
理由3 欲求不満の解消や退屈しのぎ
欲求や運動、好奇心などが満たされないと、暇つぶしや退屈しのぎのために何かしら噛む場合があります。対象はさまざまで、いわゆるイタズラや破壊行動につながります。
理由4 その他、歯の抜け変わりが関係している場合
犬は、生後4〜5か月から乳歯が抜け始め、だいたい生後8か月の頃には永久歯に生え替わります。その頃は歯茎がムズ痒いのでしょう。いろいろなものを噛んで、歯茎のムズ痒さや違和感を解消するようです。
甘噛みは放置するとどうなる?直すべき理由
噛む力が強くなる
子犬が噛む力は弱いですが、成長するにつれ強くなっていきます。愛犬がじゃれているつもりでも大怪我をする可能性が大きくなります。
噛むことで要求を通そうとする
甘噛みの理由には要求も含まれます。甘噛みを放っておくことで要求のたびに噛む癖がついてしまう場合があります。
破壊行動や事故につながる
甘噛みをやめさせるには、子犬に噛んで良いもの、悪いものを教える必要があります。そのため、家具や壁などを噛んでボロボロにしてしまったり、配線器具や電線コードを噛んで事故につながる恐れも出てきます。
甘噛みを直すのにベストなタイミング
甘噛みはできる限り早い段階で教えていくべきです。
成長とともにいろんなことを学ぶだろうから、放っておいても大丈夫だと思いがち。犬は賢く多くのことを経験によって学んでいきますが、私たちのルールは私たちが教える必要があります。
噛むことは犬にとって当たり前のこと
犬が口を使うことは、人が手を使うのと同じようなもの。犬にとって噛むことはごく自然な行動です。それを全面的に禁止することは犬にとって大きなストレスになってしまいます。
けれども、甘噛みを放置されたまま成犬になると、力の加減も噛んでいいもの悪いものも学習していないため、のちのちトラブルや事故につながることがあります。では子犬の甘噛みにはどう対処すればいいのでしょう。
甘嚙みする子犬のしつけは?
噛むことは犬にとって自然な行動なので、全部をやめさせることはできません。むしろ全部をやめさせる必要もありません。噛まれて困るものの代わりに噛んでも良いものを用意してあげること、そして噛む力の抑制を教えることが大切です。
甘噛みの基本的なしつけ方法
一般的には苦い味のするスプレーを甘噛みする手やモノに吹き付けておく方法があり、やり方によってはある程度の効果がみられるようです。ですが、私たちが吹き付けるところを見られてしまっては嫌なことをされているという認識になってしまったり、吹き付けていない場所を噛むようになる可能性もありますので難しいです。
GREEN DOG & CATがおすすめする方法としては、噛んではいけないものには歯をあてない(歯を当てていることに気づかせる)、噛んでも良いものを与える、ことです。もちろん、ストレスや運動不足ではないかなど、愛犬の状態を把握することも重要です。
状況別:甘噛みをさせないトレーニングのポイント
遊びの一環で甘噛みする場合
対象がヒトや犬など
遊びとはいえ、人の身体に歯を当てることは、たとえ甘噛みでもやめさせたほうが無難です。人との遊びは、最終的にはオモチャなどを介したものにしましょう。
噛む力の抑制を覚えさせておくことも大切。本来は、兄弟犬や母犬とじゃれ合うなかで、力加減を覚えることが理想です。そこで、すでに親元から離れ、兄弟犬や母犬と遊ぶ機会がなかった場合、月齢の近い子犬同士、あるいは子犬と遊ぶことに慣れている成犬と遊ぶことから学ばせたくなりますが、見知らぬ犬が集まるドッグランでいきなり遊ばせる、といった安易な実践は避けておいたほうがよいでしょう。
犬同士の遊びは他犬とのコミュニケーション方法を学べるというメリットがある一方、相手ややり方を間違えると、心身にダメージを負うようなトラブルや事故を招き、一生のトラウマをつくる可能性があるからです。どこまでが適切な遊びの範囲内なのか、見極めることのできる犬の専門家の管理の下で遊ばせる方がより安全です。
また対人、対犬とでは、噛む力加減が違います。ほとんどの犬の場合、皮膚はもれなく丈夫な毛皮(被毛)付きなのですが、私たちの皮膚はそこまで丈夫な被毛に覆われているわけではないからです。
チャレンジ! 人に対する噛む力の加減を教える練習
ポイントは、力加減を犬自身に気づかせること。人の手にじゃれているときに歯を強くあててきたら、一切の動きを止めたうえで低い声で「痛い!」と一言やや強めに伝えます。怒るのではなく、遊びに夢中になっている子犬がちょっと驚いてハッと我に返るように仕向けます。
甲高い声では、よけい興奮させてしまうことがあるので注意しましょう。子犬が歯を当てるのを一瞬でもやめたら優しくほめます。興奮させないよう、静かにそっとほめましょう。なお、たとえ低い声であってもヒートアップしてしまう子犬もいます。その場合は、声をかけること自体をやめ、無言で背中を向けたりその場から立ち去ったりしてみてください。
力の加減ができるようになったら、今度は人の手は遊びの対象ではないということをオモチャを介した遊びのなかで教えていきます。 オモチャを介した遊びのなかで、うっかり子犬の歯が人の手に当たった瞬間に、さきほどと同じ要領で「痛い」と言って遊びを一方的に中断します。黙って背中を向けたり、別の部屋に移動したりするのもよい作戦です。そして、数秒ほど間を置いてから、オモチャを介した遊びを再開します。
手に歯をあてたら楽しい遊びが中止になった、遊び相手がいなくなったと思えば、犬も「あれ?これはやりすぎなのかな」と気づくようになります。
対象がモノ
家具や電気コードを噛むのはとても危険です。イタズラされると困るモノには子犬がアクセスできないようにして、代わりに噛んでも良いオモチャを用意してあげます。 天然ゴム製の歯ごたえがある知育玩具も市販されています。そういったオモチャの中にオヤツなどを入れて与えると、子犬はそれを取り出そうと夢中になり、カミカミしながら探索欲求や知的好奇心を満たすことができます。オモチャは愛犬の好みにあわせて用意してあげると良いでしょう。ただし誤飲事故防止のため、必ず飼い主の管理の下で与えてくださいね。
コミュニケーションの一環で甘噛みする場合
家庭の方針によって、多少歯が当たっても気にしないということもあります。その場合も、噛む力の抑制がきちんとできており、且つ何らかの合図ですぐに甘噛みをやめられるような聞き分けの良い子にしておくことは必須条件です。
監修者コメント
さきほどの記述にあるような「甘えたい、かまってほしい」ことが原因なのであれば、まずはそのニーズの不足をしっかり満たしてあげるようにしましょう。
欲求不満の解消や退屈しのぎで噛む場合の対策
探索欲求や運動欲求が満たされておらず、暇でしょうがない子犬は、自ら遊びを見つけてイタズラや破壊行動を始めます。 飼い主にとっては困った行動でも、子犬は困らせようと思ってやるわけではありません。 疲れるまでたっぷりと遊んで、毎日の散歩の距離や時間も延ばしてみましょう。疲れた子犬は、イタズラすることもなく早々に寝るものです。
甘噛みのしつけがうまくいかない理由
子犬が混乱する態度をとっている
甘噛みしてきたときに、ハッと気づかせることが大事ですが、これくらいしょうがないと流してしまいがち。一貫した方法で伝えないと子犬も甘噛みしてもいいんだ、と思ってしまいます。子犬と一番長く接する人だけでなく、家族みなで同じ方法を取るようにしてください。
監修者コメント
余談ですが、人によって対応が異なる(直後の結果が異なる)ことを経験することで、犬も人によって異なる行動をするようになるケースがあります。それを「私のことを下に見ている」とか「犬にナメられている」と捉える人が見受けられますが、その解釈は適切ではありません。行動は直後の結果に影響を受けます。犬はシンプルにその経験(直後の結果)から学習しているにすぎません。
興奮しすぎるような遊びをさせている
遊びは興奮しすぎないうちにクールダウンさせることが望ましいです。興奮状態では噛む行動も引き起こしやすくなります。遊びで興奮しすぎたときは「おすわり」「ふせ」「ハウス」など動きを止めるエクササイズに切り替えて、落ち着かせる時間を作っていきましょう。
噛まれたときの反応がおおげさ
噛まれたとに「痛い!痛い!」と大きな声を出したり、手で払ったりするしぐさが、子犬には楽しい反応になってしまう場合があります。 チャレンジ! 人に対する噛む力の加減を教える練習を参考になさってください。
子犬の甘噛みを悪化させるNGなしつけ方
子犬の口(マズル)を掴む
しつけ全般に言えることですが、子犬が怯えるような方法(叱る、体罰を与える)は避けるべきです。
噛むからといって口を掴むと、人の手に対して嫌悪感を抱きやすくなります。場合によっては、顔周りに手が近づくだけで噛むようになる可能性もあります。日々のケアや治療時に大変困りますし、何より信頼関係が築けなくなります。
大声で叱る
子犬からすると私たちはとても大きな存在。大声で叱られることに恐怖心を抱くでしょう。または叱られることに対しても相手をしてもらえたというご褒美になってしまう場合もあります。
家具・壁を噛むのを許す
少しの傷くらいならと許してはいけません。一貫して噛んで良いもの、悪いものが覚えられるようにしていきましょう。
甘噛みされたときに相手をしてあげる
相手をすることは子犬にとってご褒美になります。甘噛みしたらご褒美をもらえたというふうに覚えてしまうでしょう。一貫した態度で相手をしないようにしましょう。
家族によってしつけ方が違う
子犬に正しい行動を覚えてもらうには一貫性が大事です。家族によってしつけ方が違うと子犬が混乱し、覚えるのに時間がかかってしまいます。
【体験談】先輩飼い主に聞きました。
子犬の甘噛みに関するあれこれ
子犬が吠えるのは当たり前のことですが、人と暮らしていくうえでは好ましくない場面で吠えること(=無駄吠え)をなるべく減らしていきたいですよね。先輩飼い主たちは実際どうだったのか、GREEN DOG & CATの子犬飼育経験のあるスタッフに体験談を聞いてみました。
子犬のころ甘噛みはありましたか?
GREEN DOG & CATの子犬飼育経験のあるスタッフに聞いてみました。
12件の回答
回答数:12
(スタッフT ホワイトシェパード 35kg)
パートナーが甘噛みしてきたら(自分が)唸る、歯を当てる、辞めたらほめるを繰り返しました。
(スタッフK ポメラニアン×ジャックラッセルテリアのMIX 3.6kg)
ありました。ロープのおもちゃが大好きでした。あとは、リモコン・カバンの紐・靴下などをよく噛んでいました。
ドッグトレーナー遠藤からのアドバイス
子犬が甘噛みをするのはそのニーズ(欲求)があるからで、ごく自然なことです。まずはそのニーズを満たしてあげるために、噛んでも問題のないものを提供してあげましょう。
やはりこの場合も個々のケースで対策内容は変わり得ます。子犬が置かれている環境(状況)はどうなのか、そしてそのあとどのような環境(状況)の変化があったのか、をもとに対策を臨機応変に修正していくことが必要です。
ご自身での解決が難しい場合は、やはり専門家に相談することをおススメします。
買ってよかった GREEN DOG & CATスタッフ愛用の甘噛み対策グッズ
子犬の甘噛みについてよくある質問(Q&A)
子犬の甘噛みはいつまで続きますか?
子犬の甘噛みが歯の抜け替わり期との関係が深いケースでは、生後3か月ほどから始まり生後12か月くらいまでが目安です。ただし甘噛みの理由はそれだけではありません。自然になくなるのを待つのではなく、積極的に教えていきましょう。
子犬が喜んでヒトの手を噛むように見えますが、なぜですか?
子犬が楽しい気持ちが高まっているときの喜びの表現として、また噛む行為は遊びのひとつです。親兄弟犬たちとも嚙み合って過ごしてきたことでしょう。ただし、大きな問題にならないうちに噛んでいいもの、いけないものを教えていく必要があります。「理由1 遊びの一環として噛む」を参考になさってください。
甘噛みを放っておくと本気噛みになりますか?
本来、甘噛みは遊びの要素、本気噛みは攻撃の要素とこれらは異なる行動です。ですが、噛む力によっては甘噛みでも私たちの皮膚から流血することがありますし、噛んで大丈夫なもの以外は噛まないことを教えておくことで万が一の事故の防止にも役立ちます。「理由1 遊びの一環として噛む」を参考になさってください。
おわりに
もし犬と暮らすのが初めてだったり、教え方がよくわからなかったりする場合は犬の行動学の専門家やトレーナーに子犬の性格や反応を直接見てもらい、 より適切なアドバイスをもらうことをおすすめします。
問題が大きくなってからトレーナーに駆け込む飼い主さんが多いですが、手に負えなくなる前に、早く正解を教えてあげる方が犬にとっても飼い主にとってもよいはず。
子犬の感受性や性格もいろいろで、犬種特性や個体差もあります。対処法も、教え方も、正解はひとつではありません。その子にあった方法で教え、ステップアップしていきましょう。
パートナーのしつけやトレーニングに関するご相談は、犬の行動学に詳しい専門家に直接パートナーを見てもらう方法を推奨しております。
おやつの種類や量などについては、お迷いの際はGREEN DOG & CATのごはんの窓口をお気軽にご利用ください。
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