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犬の写心家 ホタパパが語る パートナーの幸せな旅立ちのために 第1回
第1回
シニア期に入る前に、犬の看取りを準備する~その1~
パートナーが元気なうちに調べておくこと、勉強しておくこと
犬の写心家 ホタパパ(初田 勝一)
1966年京都府生まれ。犬の心を撮る「犬の写心家」として活躍中。
いきいきと躍動感のある写心が愛犬家の間で話題となり、2007年に開催した写心展「ガンバレ!老犬写心展やさしい時」が反響を呼び、毎年シニア犬をテーマにした写心展を全国各地で開催。自分の人生を変えたゴールデン・レトリバーのホタル(10歳)とジャック・ラッセル・テリアの岳(2歳)とともに、全国各地の愛犬たちを撮影している。
僕らが思っている以上に早いスピードで老化していくパートナー。だからいざという時のために、元気なうちに必要なことを調べておくことが大切だと思う。 老衰で眠るように旅立つ子は本当にシアワセ、でもほとんどは何らかの病気で亡くなるのが現実...。だから今のうちに、シアワセな旅立ちのために家族としてできることは何なのか考えたい。
1老化のサインを知ろう
- 体 力散歩に行きたがらない、足どりがヨボつく、寝てばかりいる
- 食 欲食欲がなくなる、選り好みをするようになる、水も飲まない
- 機 能目が見えなくなる、耳が聞こえない、排泄がうまくできない
- 認知症徘徊する、体をぶつける、狭い場所から出られない
など
犬種や年齢、その子の性格によって、老化のサインは若干違う。例えば、白内障で目が見えなくなっても元気に走る子、 寝てばかりだけど川遊びだけは好きな子など、年を重ねるとますますその子らしくなるのかもしれない。
さまざまな老化のサインの中でもベテラン家族の皆さんが口を揃えて仰るのが、「食欲がないときが一番辛かった」ということ。 どんなものだったら食べてくれるのか?どんなものなら栄養が摂れるのか?においの強いもの、カロリーの高いものは?昨日は食べてくれたけど、今日は食べてくれなかった...。
家族にとってはササミ一切れ食べてくれただけでも最高のシアワセの瞬間となったり、数時間かけて作ったものでもひと口も口にしなくてがっかりしたり、 食事のことで毎日一喜一憂している。今はシニア向けのフードやレシピも豊富にあるので、食事の選択方法については、自分なりの引き出しをいっぱい勉強しておこう。
2ケアの方法を知ろう
- 体 力好きな遊びをさせる、マッサージをする、介助器具を使う
- 食 欲においの強い&カロリーの高いもの、水分補給を兼ねた食事
- 機 能目の動き、泣き方、吠え方などの意思疎通サインを理解する
- 認知症家庭内で危険箇所の対応をする、介護用品を使う
- 精神面その子のプライドを傷つけないようにする
など
10歳になったパートナーのホタルを見ていて、「老化のサインに合わせて家族がケアしてあげることが大切」だと僕も痛感するようになった。 例えばボール遊びが好きな子だったら、取りやすい場所に投げて取ってきたら褒めるといった、体力面と精神面の両方をケアしてあげるようにする。これまでできたことができなくなるのだから、その子のプライドを傷つけないことも大切だ。
特に排泄を家の中で失敗したときは、プライドを傷つけないように、分からないように後始末する心配りが欲しい。 どうしても外でしたい子には、できるだけ外でさせてあげるために介護器具を準備しよう。特に大型犬の場合は、女性でも介護しやすいような介護用品を選択することも必要だろう。
そしていよいよ寝たきりになると、排泄の後始末がひと仕事になる。排泄でしっぽが汚れないように三つ編みにする、おしりの毛をカットする といったひと工夫でぐっと軽減される。そしてその子に向かって、「えらいね~おしっこでたね。今日は快調だね。」などと褒めながら後始末をしてあげられるようになれば、もっといいと思う。
身体の変化は専門の獣医さんにしかわからないが、寝たきりになると家族にしかわからない"その子なりの意思疎通のサイン"が自然と理解できるってことを、 僕はベテラン家族のシアワセの時間から学んだ。 目の動きで「水が飲みたい」とか、足の動かし方で「体の向きを変えて欲しい」とか、あるいはそばにいてほしいときの泣き方、シアワセのわがままの吠え方など...。 そのときになれば自然と理解できて、家族がパートナーをケアするときに大いに役立っている。
3家族の決断
- 最期の治療どこまで治療するか?延命治療をするか?
- 最期の時間家族の役割は?休暇は取れるか?
など
老衰にしろ病気にしろ、一番大切で難しいのは「どこまでっていうラインを家族で決めておく」ことだ。 獣医さんと相談し、家族でその子の最期の線引きを決断する。延命治療をさせるか?入院させるか?獣医さんに決断してもらうのではなく、家族で決断する。 入院先でひとりで亡くなるよりは、最後は大好きなおうちでって思うから。
寝たきりになって、最後の残されたわずかな時間、ひとりで旅立たせることは避けたい。 それはその子にとっても家族にとっても、最期の大切な時間だから。家族それぞれに社会的立場があるけれど、「なんで犬のためにそこまで?」と思われるのが現状だけれど、 でも最大限にその子のために努力し、家族で方法を決める。奥さんはパートの休暇を申請する、子供に早く帰ってきてもらう、旦那さんと奥さんで有給休暇を調整する。その方法に正解も不正解もない。
みんなが揃っている週末を待って、父さんが仕事から帰ってくるのを待って。
子供たちが学校に行くのを見送って、姉ちゃんが仕事に行くのを見守って。
そして、当たり前の朝に気がつけば...。
本当は偶然かも知れないけど、犬は自分の"死に際"を選ぶ。自分の"死に際"を見られたくない犬もいると思う。 自分が亡くなったってことに気がついていない犬もいると思う。 あと付けの言い訳かもしれないけど、僕は犬が家族のことを考えて旅立つって信じている。だから、家族の役割を決めておいて下さい。後悔しないために、犬が安らかに眠れるために。
次回、第2回のテーマは「"エンジェルケア"死後に起こる犬の体の変化に対処する」です。