愛犬のための防災対策はできていますか?
近年は地震発生など自然災害が多い。すぐに逃げなければならないとき、外出中に被災した場合など、それぞれに防災対策は必要です。自然災害以外にも世界的な感染病や世界情勢の影響によっても流通が滞ることを経験しています。
いつも与えているドッグフードが手に入らなくなっても慌てずに済むように備蓄していますか?
避難所に行くことや留守中に被災した場合のことを想像したことはありますか?
一つでも安心を得られる準備をしておきましょう。
災害はいつ起きるか予測できないものだから日頃からの準備が必要です。被害を少なくするためにはまずは自分の身は自分で守る「自助」が大事だと言われています。
家族である愛犬を守るのは私たち役割。私たちが共に生きる社会で、愛犬を含めて認め合える、助け合えることを願うのであれば当然のことですね。
ここでは準備しておきたい防災グッズや対策をアドバンス・ホリスティックケア・カウンセラーの山本がご紹介します。愛犬やご家庭の状況に合わせて出来ることから始めてくださいね。
近年は地震発生など自然災害が多い。すぐに逃げなければならないとき、外出中に被災した場合など、それぞれに防災対策は必要です。自然災害以外にも世界的な感染病や世界情勢の影響によっても流通が滞ることを経験しています。
いつも与えているドッグフードが手に入らなくなっても慌てずに済むように備蓄していますか?
避難所に行くことや留守中に被災した場合のことを想像したことはありますか?
一つでも安心を得られる準備をしておきましょう。
発災時に避難が必要かどうか、その後に続く生活状況はだれにも予想できません。環境省のガイドラインには「飼い主はペットと同行避難することが基本である」とし、それに備えるべき対策と意識を持つことに努めなければならないと記載されています。愛犬と一緒に避難する場合や、やむを得ず愛犬を誰かに預ける場合も想定しておきましょう。
上記はあくまで目安です。日常の備蓄とは未開封のドッグフードのこと。現在与えているドッグフード以外に1ヶ月分以上の新しいドッグフードを備蓄しておくように習慣づけましょう。 災害時だけでなく、何らかの理由で購入できない状況になっても慌てずに済みます。
大袋のままよりも詰め込みやすくなります。
ドッグフードには賞味期限がありますので常に新しいものを備蓄し、古いものから使っていくよう入れ替えましょう。
下のイラストはヒトの家族になっていますが、ここに愛犬を加えて下さいね。
イラストの引用元:農林水産省 災害時に備えた食品ストックガイド(2)
【関連ページ】愛犬の防災(1)ローリングストック
災害時の状況は感覚器官が敏感な愛犬にとって大きなストレス。 しかしながら体調不良になってもすぐには診てもらえない可能性が高いです。心配な場合は消化に負担の少ないフードやサプリメントやストレスケアの助けになる愛犬が喜ぶフードを用意しておくのも良いでしょう。もちろん、実際に与えて体質に合っているか確かめておいてくださいね。 (食べなれないものは体調不良を招く可能性があります)
お腹にやさしいフード
嗜好性高めのトリーツ
お腹ケアのサプリメント
荷物がかさばらないよう折りたたんで携帯できる食器がおすすめです。自宅以外の場所で食べなければならないときに愛犬には手で器を持って与えると安心して食べられる場合があります。複数頭いる場合も1つのボウルを順番に。非常時だからこそ一頭ずつ向き合う時間を作ってあげたいものです。水分補給もこまめにしてあげましょう。
クレート・キャリー・ケージは緊急避難時に一緒に愛犬を連れて逃げるために必要なのはもちろん、避難所(慣れない場所)で落ち着ける場所としても使えます。これらは四方が囲われた箱状のものをいいますが、商品によって呼び名がさまざまです。
寝場所とトイレが設置できるケージは、ある程度広さのある囲い(サークル)に屋根がついたものです。長時間の留守番に使います。
これらは実物や写真で形状を確認し、愛犬に合ったサイズを選ぶようにしてください。
多用性があり、愛犬の排泄用にはもちろんのこと、私たちが使う公衆トイレはすぐに不潔な状態になります。濡れた場所を拭いたり、足の踏み場を作ったり、雑巾代わりにも。万が一は人のトイレとしても使用できます。(ワイドサイズで人1回分目安)
集団生活時にはエチケットを守ることは重要。特に愛犬の排せつ物の処理や匂いなど衛生面には気を使うべきです。
臭いものを入れるだけでなく、人の食器を汚さずに使うためなどいろんな用途に使えます。ただし犬の場合は飲み込む危険があるので人用の食器にのみ使えます。
排せつ物が見えたり匂ったりしないようにマナーポーチを使います。消臭タイプなら良いですね。
被災時には水を節約しなければならず、愛犬の食器の洗浄もままならないかもしれません。そんなときに汚れを落とせるスプレーがある便利。 もちろん犬が舐めても平気な成分のものを。抗菌・消臭5スプレーがあれば、愛犬の寝ている場所や体、トイレ周りの消臭にも便利です。
排泄物の処理だけでなくいろんな場面で役立ちます。持ち出し袋にはトイレットペーパーを密閉できる袋に芯を抜いた状態で平たく圧縮して入れておくとかさばりません。
愛犬の命を守るものです。いつも使っているもののほかに予備を防災セットの中にも入れておくと良いでしょう。避難所や慣れない場所でパニックになるのはよくあること。長時間目を離したときにリードを噛みちぎってしまうことも。首輪とハーネスを両方付けておく方が良い場合があります。
・防災セット
既に持っているものが含まれているから買う必要がないと考えがち。ですが、いざという時にすぐにひとまとめに出来るかどうかを考えてみてください。セット品を用意して持ち出し袋に入れておくと安心ではないでしょうか。
持病や症状があり薬を常用している場合は、獣医師に相談して予備を持っておくようにしましょう。
自治体に愛犬を登録した際に登録番号が記された鑑札が交付されます。登録手続きは1頭につき、生涯1回です。
写真引用元:神戸市ホームページ
狂犬病予防注射の接種を受けた際に注射済証明書が発行され、手続き後に注射済票が交付されます。狂犬病予防注射は毎年必要なので年度ごとに発行されます。
鑑札と注射済票は愛犬に装着することが義務付けられています。
いずれもデザインは自治体(年度)によって違います。(写真は神戸市の例)
愛犬の身元が分かるよう飼い主の連絡先を記載するものです。
写真引用元:環境省ホームページ
2022年6月1日からブリーダーやペットショップ等で販売される犬についてはマイクロチップ(個体識別証)の装着を義務化、譲渡される犬の場合は現在のところ努力義務とされています。(譲渡された犬に既にマイクロチップが装着されている場合は飼い主情報の更新が必要です)
装着方法は獣医師が専用の注入器を使って皮下に埋め込みます。読み取りは半永久的に可能な愛犬の生涯に1度の処置になります。
装着後、飼い主情報をデータベースに登録する必要があります。
今後はマイクロチップを装着しデータ登録すれば鑑札の代わりになります(鑑札交付を希望する場合はデータ登録時に選べる)。
ひとつ問題なのは鑑札やマイクロチップは、行政のデータに照会しないと飼い主がわからないこと。読み取り機はその点、迷子札は連絡先がすぐに読み取れいち早く飼い主に連絡が来ることが期待できます。両方あるといいですね。(マイクロチップの読取り機は動物病院、自治体の保健所、動物愛護センター、などにあります)
【マイクロチップの参考ページ】犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A(環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室)
愛犬の性格、お世話のポイント、病歴やワクチン歴までいろいろな情報を記す習慣を持っておくと良いですよ。飼い主である私たち自身が怪我や病気、愛犬を残して亡くなってしまう可能性もあります。愛犬のことを詳しく伝えたいときに役立ちます。
お留守番中の愛犬を守るためのステッカー(シール)です。玄関やポストなどに貼り、万が一のときは家の中にいる愛犬をレスキューしてほしいと意思表示できます。
外出時に飼い主(自分自身)が不測の事態に陥ったときのために。愛犬の名前と住所、緊急連絡先を記入して携帯しておきましょう。もしもの時に愛犬のことを頼める人を探しておくことも大事ですね。
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迷子になった時にチラシやポスターを作製する際、状況によっては紙媒体と電子媒体の両方のデータがあると助かります。また、飼い主と一緒に映っている写真は身元証明のサポートになります。過去には飼い主以外の人に引き取られてしまうというトラブルも発生したため、飼い主だと証明するものがない場合は引き取りに時間がかかる可能性があります。
災害時には私たちヒトも愛犬もストレスを感じます。状況によりその大きさは違いますが、持病が悪化したり、普段は見られない行動や精神状態に陥ったりすることもあります。
レスキューレメディはイギリス人医師・細菌学者であるエドワード・バッチ博士によって確立された、花を使った癒しのシステム「バッチフラワーレメディ」のシリーズの中の一つ。60年前からホリスティックケア(心も身体も癒された状態を目指すケア)で使われています。
特にレスキューレメディはあらゆるストレス、緊張、恐怖を感じているときに心と体のバランスを取り戻すのに役立ちます。私たちも愛犬も一緒に使えるので1本あると良いですよ。
※レメディの中にはアルコールを使った商品があります。愛犬用にはアルコールの代わりにグリセリン(アルコールフリー)を使ったものをご利用ください。
避難所によってはクレートに入れた状態でないと連れていけないというケースがあります。 クレートやケージに入って静かに過ごせるよう普段から慣れておくことが大事。 また、公衆衛生の面やアレルギーへの配慮など、愛犬とは違う場所で過ごす可能性が高いです。ケージの中で過ごす時間が長くなることでしょう。
知らない人や動物がそばにいても騒がずに過ごせるようにすること、強いストレスを感じなくても良いように社会化が出来ていると良いでしょう。方法はインターネットや本など情報はたくさんありますが愛犬にとって良い方法がわからない場合や自信がない場合は早めに行動学の専門家に頼りましょう。かかりつけの動物病院や地域の保護施設などに情報がないか聞いてみても良いでしょう。
災害の備えはまずは自助(自分で自分自身の身の安全を守る)ですが、次は共助(地域やコミュニティといった周りの人たちとの助け合い)が欠かせません。ご近所さんに愛犬がいることを知ってもらい、何かあった時に愛犬の様子を見に行ってもらうことを頼めるようなコミュニケーション(おつきあい)があると安心ですね。
愛犬家同志のコミュニティもさまざまなものがあります。主に同一犬種や趣味の仲間といったものが多いです。他には迷子の時に役立つアプリもあります。「犬、迷子探しアプリ」などで検索してみてください。いくつかのアプリが見つかります。これらは登録しておいて必要な時に情報共有しあえるので、普段のおつきあいは苦手な人にも利用しやすいです。
ワクチン・予防接種には、ひとつは国から義務付けられている狂犬病予防ワクチン(狂犬病は現在も発症すれば治すことが出来ず死に至る怖い病気)、もうひとつは義務ではない混合ワクチン(愛犬を重篤な症状に陥る可能性がある感染症を予防するもの)の大きく2種があります。
準備しておくと安心な愛犬の防災グッズリストで紹介した注射済票(狂犬病予防注射の接種を受けた際の手続きにより交付される)は狂犬病ワクチンのこと。 混合ワクチンの接種証明書(コピー可)も同じく避難所やホテルなどに預けなければならない際に求められる可能性が高いもの。これらワクチンを接種しておくことは愛犬を感染症から守るだけでなく大きな「自助」のひとつといえるでしょう。
愛犬を迎えたら30日以内に自治体への登録を行う必要があります。もしくは、マイクロチップを装着する場合は登録まで完了すること、既にマイクロチップが装着されている場合は情報変更を行うこと、このいずれかを行うことが飼い主としての義務です。
義務だけでなく愛犬の身元(個体識別)をはっきりさせておくことは万が一のときの心配を少しでも減らすことができます。
飼い主の留守中、愛犬の居場所は安全でしょうか。たとえば一番過ごす時間が長いベッドの置き場所です。次のような場面を想像してみてください。
怪我をしたり家から飛び出してしまうような危険はないでしょうか。ケージやクレートといったある程度頑丈なものの中で留守番できるのは理想ですが、留守番の時間によってはトイレやストレスの問題も。ある程度の居場所を制限できるサークル(柵状のもので囲う)を利用するのも良いでしょう。
家庭によっては押し入れの一部をいつでも入り込めるように工夫しているケースもあります。暗くて狭い場所は愛犬も巣穴感覚で安心感が高まるようです。
連れて行くべきです。現在、環境省発行の「人とペットの災害対策ガイドライン」では「災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難することが推奨されています(同行避難)。
飼い主がペットの健康と安全を守る責務も負うことが原則となっているからです。
同行避難しても避難所にて同室で一緒に過ごせるわけではありません。一緒に過ごせる同伴避難が理想ですがそのような環境が用意できる避難所は限られています。 避難所によってペットの飼育環境が異なるため、ご自身の地域の避難所のペットの受け入れ状況、飼育環境などをふだんから調べておきましょう。
在宅避難、車中避難(エコノミー症候群に注意)など、避難所に行かなくても安全な避難生活が可能であればそれに対応した準備をしておいてください。
自治体によってはペット参加型の避難訓練(同行避難訓練)が行われています。機会があればぜひ参加しておくとよいでしょう。
その前に、やはり公共の場で過ごすためのトレーニングは可能な限りやっておくべきです。
たとえば、犬の社会化です。社会性のある犬とは、他の犬と仲良くできることと思いがちですが、ひとりぼっちでも落ち着いて自分の時間を過ごせることをいいます。基本的な動作をコマンド(決めた言葉)によって出来ることも咄嗟のときの安全確保に役立ちます。
たとえば、おすわり、立って、待て、ハウス(クレートに入る)など。
テンションが上がり過ぎたときにも落ち着かせて怪我を防止することができます。
以前、愛犬と暮らす社内スタッフ41名に防災に役立つトレーニング(しつけ)ができているかアンケートをとったところ次のような結果が出ました。(2018年調べ)
避難時に必要なしつけができていますか?
「昔はできたが今はできない」という回答はシニア期の愛犬のことになります。シニア期にあった防災(環境づくり)が必要だということですね。
ほかにはトイレの問題は大きいのではないでしょうか。どんな環境でもトイレシートの上で排尿、排便ができるととても助かります。
写真は同伴避難講座を行っている動物愛護推進委員(名古屋市)の方に教えていただいたものです。
小型犬の場合は、飼い主の両足の中で出来るように練習しておくと安心感があるそうですよ。衛生面に配慮することは、公共の場では大事なこと。このような小さなことからも同伴避難が叶う社会に近づけると考えます。
※愛犬の性格にあった練習方法を知りたい場合は、行動学の専門家(プロのドッグトレーナー)に教わるのが近道です。ペット用防災グッズをはじめとしたお役立ち情報をご紹介しました。災害はいつくるかわからないもの。何が必要か知った瞬間から準備をはじめておきましょう。
災害は避けられませんが、防災を心掛けることで出来るだけ被害を小さくすることはできます。自助が出来れば共助が出来、地域の復興も早まります。
みながお互いに助け合って生きていける社会に貢献する一歩として愛犬の防災に取り組んでいきませんか。
【参考資料】
・災害時に備えて食品の 家庭備蓄を始めよう(農林水産省)
・ペットの災害対策(環境省)
・犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A(環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室)
・ペットの防災の基本BOOK(LEONIMAL)
・災害時のこころのケア 日本赤十字社
・人とペットの災害対策ガイドライン 環境省
筆者
ペットフーディスト、アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー、ペット栄養管理士、犬の食事療法インストラクター上級師範
山本 由能(やまもと ゆの)
現在の愛犬との生活がきっかけで犬の食事や心のケアについて勉強を始めたことがご縁となりGREEN DOG & CATへ。
自身も飼い主のひとりとして愛犬との生活を楽しみ介護も経験。
日々の業務では主に犬の栄養学や健康維持に関する情報を発信しています。