環境による要因
- 気温が高い
- 湿度が高い
- 強い直射日光に当たる
- 換気が悪い
- 風が弱い
- 衣服などを着込んでいる
スタッフコラム71話目
犬は暑さに弱いと認識されていますので、多くの飼い主は外出時ではもちろん、室内の温度・湿度管理にも注意を払っています。
しかしながら、熱中症に陥る犬は、いまだ後を絶ちません。
熱中症に対するリスクは、犬種や持病、年齢などによって変わりますが、環境の整備や水分摂取を意識することで予防ができる病気です。
熱中症の危険とその対策をよく知ることによって、愛犬を熱中症から守りましょう。今回は、GREEN DOG & CATの獣医師から熱中症の予防と対策についての解説、ペットフーディストからは熱中症予防のための食の工夫をご紹介します。
高温の環境にさらされる、あるいは運動などによって体の中でたくさんの熱を作るような状況下で、体の熱を外に放出する働きが充分でなくなっておこる不調を総称して、熱中症といいます。
熱中症はあっという間に起こります。下に行くほど、重篤な症状を現しています。
熱中症は急激に進行し、愛犬の命を危険にさらすことさえあります。
人では体温が上がると、汗をかいて熱を逃がし体温を下げるように身体は働きますが、犬では汗腺は足裏のパッドにしかついておらず発汗による体温調整は殆どできません。 犬では主に唾液を蒸散させ気化熱を利用する方法(パンティング)と、身体に冷たいものを直接あてる方法で体温調節を行います。
しかし、高温多湿の場所では、体温調整の要である唾液の蒸散が上手くできません。さまざまな状況において、犬は体温調整を呼吸に頼らざるを得ず、また厚い被毛で全身を覆われていることから、人よりも高温の環境に弱い動物と考えられます。
熱中症は、環境と行動、それと犬種や体調による要因が重なった場合に起こりやすくなります。
短時間でも車中に愛犬を留守番させてはいけません
夏場の車内は50度近く上がります。窓を開けていたとしても、室温は殆ど下がりませんので、換気や温度管理としては不十分です。また、エアコンをつけたままにしていたとしても、バッテリーが上がってしまう可能性もあります。愛犬を車内に置き去りをするのは絶対にやめましょう。
留守番中に室内にエアコンを入れていたとしても、効きが十分でないことがあります。また、直射日光が差し込む場所に設置したケージに愛犬を入れていた場合にも、熱中症のリスクは高まります。
四足歩行の犬は人より地面に近い場所にいますので、アスファルトの照り返し(放射熱)によって、体感温度が想像以上に高まります。足の短い犬では、特に注意が必要です。 夏場の散歩は、早朝の5時~6時頃、もしくは夜間が適しています。
運動することによって体温は上がります。水分補給を十分にさせて、長時間の運動は避けるようにします。
係留する場合には、日陰で涼しい場所を選び、太陽の移動によって直射日光にさらされないよう十分に注意することが大切です。また、常に十分な水を飲めるようにしましょう。
短頭種は熱中症のリスクが高いのでより注意が必要
パグ、シーズー、ペキニーズ、ブルドッグ、ボストン・テリア、ボクサーなど短頭犬種は、解剖学的に他の犬種よりも鼻の穴が狭く、また軟口蓋*が通常より大きくなっていることがあります。そのため、短頭犬種は鼻呼吸がしづらく、パンティングによる体温調整がしにくいことにより、熱中症にかかりやすいとされています。
また、上部気道が閉塞する病気(短頭種気道症候群)を持っている場合、さらに呼吸がしにくくなりますので、特に注意が必要です。大きないびきや普段からのスーピー、ズービーというような呼吸音、また興奮時や暑い環境で直ぐにガーガーブヒブヒとガチョウのような鳴き声を出すなどの症状が特徴です。
*軟口蓋・・口の中の奥の天井部分から続く喉の奥にある柔らかい部分で、飲み込む時に鼻孔をふさいで食物が鼻腔に入るのを防ぐ働きがある
特に、肥満をしているとより呼吸がしづらくなりますので、適正な体重に維持できるようにしてあげることが大切です。
熱中症のリスクが高い犬種としては、シベリアンハスキーやグレートピレニーズ、サモエドなど寒冷地(北方)原産の犬も挙げられます。毛が厚いため熱がこもりやすく、一層の注意が必要です。
また犬種に限らず、子犬や高齢犬および、心臓や呼吸器、腎臓病、糖尿病など持病がある犬においても熱中症のリスクが高まります。
意識があり比較的軽度な場合には、水で濡らした冷たいタオルや保冷パック、缶ジュースなどで首もとや脇、内股の部分を冷やします。
意識が朦朧(もうろう)としているような重症な場合には、愛犬を水場や浴室に連れて行き、全身に水をかけます。もしくは冷たい水が張っている桶に首から下をつけます。氷水のような冷たすぎる水は血管を収縮させてしまい逆効果になるので、水道水を使用します。
外出先で、一刻を争う場合には、手持ちのお茶やジュースをかけるのもやむを得ません。
パートナーに意識があって自力で飲める場合は冷たい水を少しずつ与えます。スポーツ飲料を水で半分に割ると吸収がよくなります。
犬用のハイポトニック飲料なども市販されていますので、外出時には常備すると安心です。なお、意識がない場合には気管に誤って入ってしまう可能性があるため、無理やり飲ませないようにしましょう。
できるだけ早く病院に連れて行きます。病院には、あらかじめ電話連絡をしておき、直ぐに対応してもらえるようにしてもらいましょう。また、前述のように身体を冷やしながら移動します。症状が軽度に見えても後から悪化することもありますので、必ず動物病院を受診しましょう。
熱中症は、猛暑はもちろんですが、日本の気候では春や梅雨の時期の室内でも多く発生します。春は突然に夏日のような気温になることもありますし、梅雨は気温がさほど高くなくても湿度が高いため犬の体温調整が難しい時期でもあります。春先から気温・湿度には十分に注意をする必要があります。また、愛犬が常に新鮮な水を飲むことができるようにし、ウェットフードやスープなどで積極的な水分補給も心がけましょう。
外出時には冷感をもたらす機能性素材で作られたウェアなどを利用しても良いでしょう。
特に留守中は、クーラーをつけるのはもちろんのこと、扇風機を併用して室内の空気を循環させます。エコではありませんが、愛犬の命を守るほうが重要です。
ひんやり触感のマットなども販売されていますので、こういったグッズも利用しながら、2手3手を打って熱中症対策を行うことをお勧めします。
体内を健康的に潤すことが大事です。水分の出し入れ(補給、排出)の両方を意識しましょう。
水分摂取は熱中症予防の基本ですが、愛犬が水を飲む姿を見て大丈夫だという判断は少し違います。実際にどれくらい飲んでいるか、一度は計ってみることをおすすめします。
目安の摂水量は体重1kgあたり50~60mlが目安量です(体重4kgなら200~280ml)
少ないと感じたら(便が潤いのある状態で1本の形は充分は水分がありますが、乾燥していてポロポロ小さく分かれる状態は水分不足の目安です)、水分補給の工夫をしましょう。
アドバイス
ウェットフードや生食など水分豊富(ドライフード以外の食事)な食事の場合は、その分飲む量が減ります。運動量も食事量も少なめなのに体重1kgあたり100ml以上飲むような場合は飲み過ぎで疾患の疑いもあります。普段とは違う様子が続く場合は病院で診てもらいましょう。
水そのものは吸収されやすいのですが、体から出ていくのも早いです。ハイポトニック飲料以外でも、野菜スープ、はちみつ水、ヨーグルト水など、水の中に何か少量でも混ぜて与える方が体内を潤すことに役立ちます。
水分を摂りこむには体内の不要な水分(老廃物を含む)を出すことも意識するといいです。水を出したら、水を飲みたくなる、という風に巡りが良くなるイメージです。
水分の排出する働きを持つ成分はカリウムという野菜や果物に多く含まれるミネラルです。
おやつも肉系だけでなく野菜や果物を意識したり、ドッグフードに野菜のスープを加えたり、愛犬が好むもので与えられるといいですね。
yum yum yum! ジュレ仕立て はじめてセット
肉、野菜の入ったお出汁風味のおいしいジュレ。ご褒美にはもちろんですが寒天が体を潤すサポートしてくれます。さらに水で薄めてもいいでしょう。
商品を見る暑熱馴化(しょねつじゅんか)
私たちヒトも熱中症予防のために注意を促されているのが「暑熱馴化(しょねつじゅんか)」です。5月あたりから急に夏日のような日もやってきますね。体がまだ暑さに慣れていないときは熱中症にもなりやすいのです。
軽く運動しておくこと(体温をあげることをする)で少しずつ夏の本格的な暑さに備えることができます。暑さに慣れるのには2週間くらいかかるそうですので、暖かくなり出したと感じたら早めに意識するといいですね。
愛犬の場合も普段からあまり運動が出来ていない場合は、少しずつでもお散歩中に軽く走ってみるなど、ハァハァいうくらいの運動を取り入れてみるのはいかがでしょう。
梅雨時期など湿度が高いときは体温を下げにくくなるので、天気の良いときに。慣れない運動は無理せずに少しずつ様子をみながら行いましょう。お散歩には飲水用のお水も忘れずに持っていってくださいね。
熱中症が起きやすいのは夏の屋外ですか?
夏だけではなく、条件が揃えば5月から注意が必要です。また屋外だけでなく、屋内でも発症の危険性があります。
熱中症にならないためのクーラーの適温は?
犬は暑さに弱いため、私たちが少し肌寒いと感じるくらい(25度くらい)が適温です。もちろん犬種や体格、過ごし方によっても適温は異なります。老犬で寝ている時間が多いと冷えやすく、若くてちょっとしたことで吠え続けてしまうような場合は体温が上がりやすいです。普段から室温と愛犬の状態をよく観察して調整してください。
ハァハァ息が荒いだけでも動物病院に連れていくべきですか?
気温が高い時や活動時で体温が上がった時など、犬は舌を出してハァハァと息をして(パンティングをして)熱を蒸散させるものです。その様子がいつもと様子が違って、元気がない、呼びかけても反応が鈍い場合は、すぐに動物病院に行くべきでしょう。本記事内「熱中症の症状」を参考にしてください。
熱中症だけでなく、体調の異変に早く気づくためには、普段から愛犬の状態をよく観察しておくことが大事です。特にシニア期には、これまで平気だったことでも、いつの間にか耐性が衰えていて、体が冷えすぎる、暑すぎる、といったことがあります。
特にお留守番など目を離す前には充分に状況の確認をしてあげてくださいね。
愛犬の食事の工夫や生活の見直しなど、わからないことがあればお気軽にご相談ください。
ご相談は無料
ごはんの窓口はこちらから筆者
伊東 希(いとう のぞみ)
1998年、日本獣医畜産大学(現在、日本獣医生命科学大学)獣医学科を卒業。動物病院や大手ペットフードメーカーでの勤務を経た後、GREEN DOG & CATへ。現在は、スタッフ教育や商品の品質検証、オリジナルフードの製造に関わる。
筆者
ペットフーディスト、 アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー、 ペット栄養管理士、 犬の食事療法インストラクター上級師範
GREEN DOG & CAT ライフナビ編集部
犬と猫の基礎栄養学を学んだペットフーディスト等の資格を持つメンバーで構成されています。
パートナー(愛犬・愛猫)との暮らしを通して学んだことや感じたことを大切に、オーナー(飼い主)の目線に立ったコンテンツ制作を心がけています。
<編集部メンバーの取得資格> 編集部メンバーは、それぞれ得意分野に合わせて以下の資格を取得しています。
・ペットフーディスト
・ホリスティックケア・カウンセラー・ペット栄養管理士
・犬の食事療法インストラクター上級師範
・愛玩動物飼養管理士 など