犬にトマトを与えても大丈夫です
トマトにはネギ類のような犬にとって中毒症状を持つ成分は含まれません。私たちと同じように生でも加熱したものでも与えることができます。ただし、体質によっては注意点がありますし、大量に与えるものではありません。トマトの栄養素や注意点を知り、必要な場合に適量を与えるようにしましょう。
スタッフコラム76話目
トマトは年中見かける野菜ですが、旬は夏。私たちなら冷麺や冷やしトマトなど暑いときの食欲維持に欠かせない野菜ではないでしょうか。
愛犬のごはんのトッピング、ドッグフードの原材料としても使われています。一方で関節炎を持っている場合は避けた方が良いとか、トマトの部位によっては毒性があるといった情報もあります。
今回は愛犬にトマトを食べさせる際の注意点や適量などトマトに関する疑問についてペットフーディストの山本が詳しく説明します。
トマトにはネギ類のような犬にとって中毒症状を持つ成分は含まれません。私たちと同じように生でも加熱したものでも与えることができます。ただし、体質によっては注意点がありますし、大量に与えるものではありません。トマトの栄養素や注意点を知り、必要な場合に適量を与えるようにしましょう。
赤色トマト100g中の成分
【参考】日本食品標準成分表2020年版(八訂)
トマトはみずみずしい野菜なので、成分のほとんど(94%)が水分。 脂質や糖質も少ないため低カロリーですが、薬膳では特に食欲不振や夏バテに良い野菜とされています。そのわけは、身体にうれしいさまざまな栄養素が含まれているからです。
・赤色トマト(生) 20kcal
・赤色ミニトマト(生) 30kcal
※100gあたりのカロリー
小さめのミニトマト1個(ヘタと皮を除く)あたりは、およそ10gなので3kcalになります。ほとんどカロリーのことは計算に入れなくてもいい程度ですね。
ビタミンCやビタミンEといった細胞や皮膚の健康に必要な成分が豊富。皮膚は外から刺激(紫外線や有害物質)から身体を守る大事な「バリア機能」を持っています。特に紫外線が多くなる季節には意識しましょう。
カリウムはトマトのような特に夏野菜には豊富。身体の中の潤いやむくみ(浮腫)の解決に役立つ成分です。夏バテ予防に水分補給が必須ですが、古い水を出すことも大事。古い水をしっかり出すことで自然と水分を欲します。
※腎臓疾患の状態によってはカリウムの制限が必要な場合があります。ご心配な場合は獣医師にご相談ください。
愛犬の健康維持で注目されるのは、βカロテンとリコピンといった抗酸化作用をもつ成分。細胞が働くと活性酸素が発生します。活性酸素にも有益な仕事がありますが過剰分は細胞の老化を早めます。活性酸素がたくさん発生する肝臓の健康が気になるときにも摂り入れたい成分といえます。
βカロテンは腸でプロビタミンAに変換されてビタミンAの役割(皮膚・粘膜、免疫)をしますが、体内で必要な分のみ変換されるため、動物性ビタミンAのように過剰摂取の心配がありません。(猫の場合は変換能力がないため、直接動物性のビタミンAを摂る必要があります)
リコピンは赤色色素。真っ赤なトマトほど抗酸化力が期待できます。
トマトの酸味は有機酸(クエン酸、リンゴ酸など)です。エネルギーを作る際に必要となるもので、活発に運動した後などに過剰になる疲労物質(乳酸)の処理に役立つ成分です。暑い時期、体温調節のためにお疲れ気味な愛犬に意識してみるといいですね。
トマトの可食部(食べられる部位)は赤い実の部分のみです。まだ熟していない青い実やヘタ、葉や茎には植物特有の毒素(アルカロイド系)であるトマチンが含まれます。じゃがいもの芽(ソラニンを含む)を食べてはいけないといわれる理由と同じです。
トマトに青みが残っている場合は、常温で数日おくと熟してきますので、赤くなるのを待って使用しましょう。
トマトの皮・種にはレクチン(タンパク質の一種)が含まれます。小麦粉に含まれるグルテンもレクチンの一つであり、細胞の表面にある糖鎖(他の物質が結合する部位)につきやすく、それをはがそうとして炎症が起きたり(腸炎)、免疫細胞に異物として認識されやすいといわれています。
アレルギー体質、関節炎や腸炎など炎症性の症状がある場合、心配を減らすためには取り除くといいでしょう。トマトの仲間(ナス科植物)にもレクチンが含まれます。気になる場合は、じゃがいも、ピーマン、ナスにも注意しましょう。
※ただし、レクチン、グルテンによる腸の健康への影響はアメリカにて多い報告から研究されたものでありアジア人にはまだ少ないものです。犬にはまだ未解明な部分が多いです。問題なく食べられる犬も多いので心配しすぎないようにしてください。
※私たちではダイエット関連でブームになったインゲン豆の加熱が不十分だったために中毒症状を示す事例がありました。レクチンにはいろいろなタイプがあり特にインゲン豆のレクチンは炎症性が強いものです。
トマトは熟していれば潰れやすいですが、できるだけ小さく切って与えましょう。特にミニトマトは丸のみして喉に詰まらせる可能性もあるので注意してくださいね。
与える際にはトマトのヘタを必ず取り除きます。ヘタを取るための器具として、フルーツデコレーター(上の写真のもの)やトマトシャークやトマトコアラーといったものがあります。ミニトマトのような小さいものにはとても便利です。
生のトマトを切ってトッピング、愛犬にはこの与え方が多いようです。生はみずみずしい食感とやや酸味を感じるのも魅力ですね。
細かく切ってそのまま主食に混ぜます。みずみずしい水分がたっぷり摂れます。トマトには脂質と一緒に摂ると吸収しやすくなる栄養素(βカロテン)が多いため、オリーブオイルやサーモンオイルなどをまぶして与えるのもおすすめです。
加熱により旨味成分やリコピンが増えます。水の中に溶けだすビタミンCやカリウムを有効に使うには汁ごと与えることがおすすめです。鍋にトマトと一緒に少量の鶏肉をいれてスープするのはいかがでしょう。
薄切りにしてオーブンやトースターで焼いたり、フライパンで炒めたり、加熱することでうま味成分や甘みが増えます。酸味が苦手な愛犬におすすめですね。肉類と一緒に炒めるとより食べやすいでしょう。
トマトは加工品も多くみかけます。パウダー、ピューレ、ペーストなど。トマトの成分が凝縮されています。少量でたくさん摂りたい場合に使うといいでしょう。ただし塩分など調味料を添加していないか確認してください。
トマトがたくさん手に入ったときには、ヘタをとってから丸ごと密閉袋に入れて冷凍保存するのがおすすめです。解凍時に流水にあてると皮が簡単に剥けます。解凍後は実が崩れやすいので、そのまま鍋に入れて加熱料理に使うのがおすすめです。
冷凍せずに皮を剥く場合は、ヘタを取り、皮に十字に切れ目をいれてから(上の写真の右側)沸騰した鍋に入れ20秒ほどクルクル回しながらつけた後に取り出すと剥きやすいです。
犬にとって野菜は消化し難いもの。低カロリーですが大量には与えない方がいいでしょう。ここでは1食あたりのトッピングに適した目安量をミニトマトの個数でお伝えします。
(ミニトマト1個はおよそ10g)
※上記はあくまで目安量ですので、愛犬に合わせて調整してください。
ミニトマト1個とおよそ同量のささみ(茹でたもの)10gを混ぜました。体重4kgあたりの小型犬の1食分のイメージです。
トッピングをこれから始めたい場合は、ドッグフード トッピングの疑問を解決:トッピングしか食べない悩みをなくそう!を参考になさってください。
レクチンの説明のとおり、トマトにもタンパク質が含まれます。アレルギー反応はタンパク質への免疫細胞の反応によるものです。体質によっては少量でも食物アレルギーの原因となる可能性があります。
また、ブタクサ、カバノキ(シラカバ)、スギの花粉症の症状が出る体質であれば、トマトにもアレルギー反応が出る可能性があります。これらは交差反応アレルゲンと呼ばれるものでタンパク質の構造が似ているため同じように反応する可能性があるものです。
タコライス風
レシピを見るトマト入りリゾット
レシピを見るトマトのアイスクリーム
レシピを見るトマトは火を通した方がいいですか?
トマトに関しては生でも火を通したものでも与えられます。生はみずみずしさや酸味が魅力。加熱することで旨味成分や甘みが増えますので、そのときどきによって与え方を変えて愛犬の好みを調べてみてはいかがでしょう。
トマトの皮や種も与えていいですか?
健康上問題がなければ、皮や種つきのままで与えられます。少しでも健康に配慮が必要な場合、念のために取り除くといいでしょう。 犬にトマトを与えるときに注意することを参考にしてください。
犬にとってトマトは水分補給や身体のイキイキに役立つ成分の摂取に役立つ食品ですが、熟していないトマト、ヘタは与えないように注意が必要です。また、体質によっては念のために避けた方が良いでしょう。
日本では夏が旬の野菜で栄養価が高くなっていますので、トマト好きの愛犬のためにぜひいろんなレシピを楽しんでみてはいかがでしょう。
【参考資料】
・愛犬のためのホリスティック食材辞典
・厚生労働省 白インゲン豆の摂取による健康被害事例について
・旬を取り入れた食生活(春・夏)
・日本食品標準成分表2020年版(八訂)
・SPECTRUM LAB.JAPAN 交差反応アレルゲン類 一覧
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ごはんの窓口はこちらから筆者
ペットフーディスト、 アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー、 ペット栄養管理士、 犬の食事療法インストラクター上級師範
GREEN DOG & CAT ライフナビ編集部
犬と猫の基礎栄養学を学んだペットフーディスト等の資格を持つメンバーで構成されています。
パートナー(愛犬・愛猫)との暮らしを通して学んだことや感じたことを大切に、オーナー(飼い主)の目線に立ったコンテンツ制作を心がけています。
<編集部メンバーの取得資格> 編集部メンバーは、それぞれ得意分野に合わせて以下の資格を取得しています。
・ペットフーディスト
・ホリスティックケア・カウンセラー・ペット栄養管理士
・犬の食事療法インストラクター上級師範
・愛玩動物飼養管理士 など