スタッフコラム69話目
愛犬（パートナー）は焼き芋が大好きという話題をよく見かけます。私（筆者）の愛犬は焼き芋だけでなく硬い干し芋でも好んで食べます。
喜んで食べる姿を見るとついついもっと与えたくなりますね。もちろん犬にとってもさつまいもを与えるメリットはたくさんあります。 ですが、私たちがさつまいもを食べ過ぎると胸やけするように愛犬にも与える量には注意したいものです。
今回はペットフーディストの山本が愛犬にさつまいもを与える際に必要な情報と簡単に与えられるさつまいもの商品や簡単なレシピまでをご紹介します。
愛犬にさつまいもを与えても大丈夫です。さつまいもには犬にとって毒性のある成分は含まれていません。愛犬の体質にあった量や調理方法を選んで与えましょう。
| カロリー（kcal） | 糖質（g） | 食物繊維（g） | |
|---|---|---|---|
| さつまいも（蒸し）皮なし | 131 | 32.6 | 2.3 |
| さつまいも（焼き）皮なし | 151 | 36.7 | 3.5 |
| じゃがいも（蒸し）皮無し | 76 | 16.6 | 1.5 |
| 炊いた白米 | 156 | 27.1 | 3.5 |
同じ重量ではじゃがいもよりも白米と近いことがわかります。
愛犬たちが好んで食べる理由でもある甘みは糖質が豊富だからです。
糖質は体にとってガソリンのようなもの。他の栄養素よりも早く利用でき、体のなかでも特に脳にとって重要なエネルギー源です。ただし、体重管理が必要な場合には糖質の摂り過ぎに注意しましょう。
腸内で食べ物の移動スピードを遅らせます。小腸では分解されませんが大腸にて腸内細菌が分解して腸のエネルギーになる脂肪酸を作ります。便秘や軟便が気になる場合、適量（実際に与えて調整する）のさつまいもは便通やダイエットのサポートに役立つ場合があります。
さつまいもは炭水化物源となるだけでなくビタミン、ミネラルも豊富です。
| 葉酸（㎍） | ビタミンC（mg） | ビタミンE（mg） | カリウム（mg） | |
|---|---|---|---|---|
| さつまいも（蒸し）皮なし | 50 | 29 | 1.5 | 480 |
| さつまいも（焼き）皮なし | 47 | 23 | 1.3 | 540 |
| じゃがいも（蒸し）皮無し | 21 | 11 | 微量 | 29 |
| 炊いた白米 | 0 | 0 | 0.1 | 420 |
妊娠中に意識して摂りたい栄養素として有名ですね。細胞分裂やタンパク質の合成など体作りに必要な栄養素です。
じゃがいもはビタミンCが豊富な野菜といわれていますが、さつまいもはその2～3倍も含んでいます。抗酸化作用があり細胞のイキイキや免疫維持に関わります。犬は体内で合成できるのですが、ストレス時や病気の際にもたくさん使われるので食べ物から補うようにしましょう。 ただし水溶性ビタミンですので水の中に流れ出ます。意識して摂りたい場合は、蒸し、焼き、のほかスープや煮込みのように茹で汁ごと使うレシピがおすすめです。
細胞の若々しさを維持するために働くビタミン。食品から摂れる量はわずかですがさつまいもには比較的豊富に含まれています。
さつまいもに比較的多く含まれるのがカリウム。主な働きでは腎臓で余分なナトリウムの調整、心臓や筋肉の機能調節、体液のpH調節などにも関わっています。
さつまいもを切ったときに包丁や手につく白い粘性のある汁のこと。外側にも皮に黒いねっとりした状態でついているのはヤラピンが変化したものです。最近では食物繊維と一緒に腸の働きサポートに役立ち、便通に役立つことで注目されています。
本来カリウムは体が調整していて過剰分は体外に排泄できています。これは腎臓で行われるため、腎臓の働きが低下していると血液中のカリウムが増えたままになり（高カリウム血症）、吐き気、神経症状、不整脈などを招く可能性があります。
少しでも避けたい場合は、カリウムは水溶性のため水にさらす時間を長くしたり、茹でこぼすことで減らすことができます。またカリウムは主に肉類や芋類に豊富なので、すでに肉類を制限している、食べる量が減っている場合は摂取量自体が少ないので心配に及ばない場合もあります。
特に食欲低下時は愛犬が食べられるものでエネルギー摂取することが優先されますので、さつまいもが食べられるなら利用したいものですね。
念のためカリウムの制限が必要な段階かどうかはかかりつけの獣医師に確認してください。
【参考記事】
愛犬の腎臓が気になる！慢性腎臓病(慢性腎不全)対策の食事
シニア期の食べムラなど、糖質豊富なものを先に食べさせてみると食欲が出る場合があります。
さつまいもの品種によっても違いますが、調理方法ではゆっくり火を通すことで甘みが増えます。
ゆっくり過熱することでさつまいもに含まれるアミラーゼ（分解酵素）がでんぷんを糖に変える時間が増えて甘みが強くなります。アミラーゼが働く最適温度はおよそ65～75℃位（品種により多少差がある）なので、一気に高温にしてしまう電子レンジでは甘みが増えにくいです。
石焼芋のようにゆっくり時間をかけてさつまいもの中に熱を伝える方法では、アミラーゼがより長い時間働くため甘みが強くなるのです。
さつまいもを細かく刻んでから水にさらす、茹でこぼすことで最大1/3量に減らすことができます。切ったあとにすぐに水にさらすことは変色防止にもなります。
油を使うとカロリーがぐんと増えます。それだけでなくさつまいもに含まれるβカロテンの吸収がよくなります。βカロテンは体内でビタミンAに変換され、細胞膜、目、皮膚などの健康維持に役立つ成分です。特に老犬（シニア犬）にはエネルギー補給とともに摂りたいものです。茹でたさつまいもをフライパンに油をひいて焼いてから与えると良いでしょう。 油にこだわる場合は酸化しにくく癖も少ない太白ごま油がおすすめです。
（写真のさつまいも：直径4㎝ 厚さ1㎝ 1枚20g）
上記はさつまいもをおやつとして与える際の目安量です。目安量は主食のカロリーの1割相当です。さつまいもを与える分、主食を1割減らすようにして調整してくださいね。
さつまいもは甘いから太りやすいというイメージがあります。ですが私たちヒトのダイエットとして注目されている食品でもあります。その理由の中で愛犬のためにも参考にできる情報をご紹介します。
食物繊維は胃や小腸では消化吸収されず、腸の掃除に役立つほか大腸にて腸内細菌のエサとなり、腸の健康維持に役立ちます。食物繊維が含まれることで食物が腸内を移動するスピードが遅くなるため腹持ちが良い状態が続きます。
食物繊維については、愛犬の「腸活」今日からできる腸の健康サポート情報_愛犬には特に食物繊維を意識したいわけでも詳しくご紹介しています。
食べ物は分子レベルまで細かく分解しないと消化できません。さつまいもに含まれるでんぷんは過熱されること（さつまいものアミラーゼによる分解）で消化しやすい状態になっていますが、冷やすと分解されていたでんぷんが再度繋がって消化されにくいレジスタントスターチ（難消化性でんぷん）というものに変わります。
レジスタントスターチは食物繊維と同様の働きといえます。つまり調理後のさつまいもを冷やしてから食べると満腹感と腸の健康維持に役立ちます。
愛犬のために手作りするのも楽しいもの。愛犬用のレシピでは砂糖や香辛料などは使わないので私たちには物足りない場合がありますね。その点さつまいもは素材そのものがおいしいので一緒に楽しめます。お時間があるときに作ってみるのはいかがでしょう。
アレルギーが気になる愛犬のために作られたドッグフードでは、炭水化物源を小麦粉や米ではなくさつまいもを使用しています。
肉や魚を足すだけの手作りごはんベース
愛犬用のおやつではさつまいもが人気で多くの種類が作られています。
意外にもサプリメントの素材としても使われることがあります。
さつまいもは愛犬にとっても便通をはじめとした腸の健康、エネルギー源、体作りにもメリットのある栄養素を含むことをご紹介しました。
ドッグフードやおやつだけでなくサプリメントにも使用されています。
メリットの多い食品もそればかりたくさん与えることは禁物。愛犬にとっての適量はどれくらいか観察することも忘れないで下さいね。愛犬のお楽しみのためにもぜひ役立ててください。
【関連記事】
犬にバナナを与えても大丈夫？最適な量や与えるときの注意点
【参考資料】
・日本食品標準成分表2021年版（八訂）
・厚生労働省 e-ヘルスネット カリウム
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筆者
ペットフーディスト、 アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー、 ペット栄養管理士、 犬の食事療法インストラクター上級師範
山本 由能（やまもと ゆの）
現在の愛犬との生活がきっかけで犬の食事や心のケアについて勉強を始めたことがご縁となりGREEN DOGへ。
自身も飼い主のひとりとして愛犬との生活を楽しみ介護も経験。
日々の業務では主に犬の栄養学や健康維持に関する情報を発信しています。
